『天使の翼』第11章(52)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~
大公は、再度玉座を立ち上がると、伯爵の方に優雅に一礼してから、両腕を広げて静粛を求めた。
ようようにして広間に静寂が戻ると――
「皆の者、今ここに公女が戻った――」
大公は、たっぷりと間を置いた。
「この件はこれで終わりだ。一件落着である!」
大公は、公女に対して最大限の譲歩をしたのである――わたしには、その譲歩の背後にあるものは、何をしでかすか分からない公女に対する恐れ、というよりは、自分の娘に対する誇らしげな思い、であるように思える……
「洞窟のマリア様は、どのようなお姿でしたか?」
誰か女性の声が広間に上がった。
公女は、ひたとその方に顔を向けると――
「マリア様は、とてもお若くて、口ではあらわせないような美しい方でした。そのお姿全体が、黄金色に輝いておいででした……」
――次の瞬間、公女は失神した。
そばに居た者が、危うく、紐の切れた操り人形のように崩折れる公女の体を支えた……
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