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待ったなし、ソーシャルメディアのリデザイン~脆弱性・CSR・人間らしさドリブン~

 様々な問題が噴出するソーシャルメディアも、ここへ来てコーナーに追い詰められ、いよいよ自らのビジネスモデルをデザインし直す時が来たのでしょうか。何故なら、現行のソーシャルメディアのビジネスモデルには、(1)それ特有の脆弱性、(2)長年にわたって果たして来なかったCSR、そして、(3)『人間らしさドリブン』の欠如したUXデザインという3つの時限爆弾が仕掛けられているからです。

 日経電子版の好記事【FBの広告転機、データ企業「エシカル」が競争左右】なども参考にしながら考えてみました。



(1)脆弱なソーシャルメディアの屋台骨

 巨大に見えるデータ企業も、案外その屋台骨は脆弱なものです。何故なら、私達ユーザー一人ひとりに、例えて言うなら選挙権があるからです。

 私達ユーザーは、ソーシャルメディアを厳しく選別し、一票を投じる=アカウント削除できます。

 例えば一向にCSRを果たそうとしないデータ企業があって、業を煮やしたユーザーの二人に一人が退会すれば、一瞬にしてユーザー数から見た企業規模は半分になってしまいます。

 そして、そんなことが現実になりかねないタイムリミットが刻々と近付いてきています。2020年のアメリカ合衆国大統領選挙です。万が一2020年の大統領選で個人情報流出、フェイクニュース拡散といった2016年の悪夢が再現されるようなことがあったら、もうユーザーは許さないでしょう。

 巨大データ企業は、それまでに自らのサービスをリデザインし、その実効性を検証しておかなくてはなりません。



(2)長年放置されていたCSR

 そもそも、企業の存在価値は、生活課題・社会課題を解決するソリューションを私達に提供することであって、自らが社会課題となってしまう、CSRを果たさないなどという事はありえない事です。

 ところが、何故かソーシャルメディアに関しては、数多くの課題が放置されたまま、対応が追いついていません――

▶ソーシャルメディアの課題
① ネット広告での個人情報の利用に関するもの
② 個人情報の保護に関するもの
③ 不快な(気味の悪い)ターゲティング広告
④ 個人情報の流出・漏洩に関するもの
⑤ フェイクニュース
⑥ ネットで拡散されるヘイトスピーチ
⑦ コンテンツの管理に関する法的責任
⑧ インターネットへの依存に関するもの
⑨ フィルターバブル(AIが個人の嗜好を把握し、その人に合った情報を
 優先して表示する結果、人が見たい情報だけしか見なくなり、視点が
 極端に偏ってしまう現象)


 問題が多岐にわたっている分、様々な施策が必要となってくると考えられますが、中でも最も重要なのが、フェイクニュース、ヘイトスピーチなどの『不適切なコンテンツ』と『表現の自由』とのバランスだと考えられます。『不適切なコンテンツ』の定義と規制が厳格な基準の下に適用され、『不適切なコンテンツ』が確実に排除されつつ、同時に『表現の自由』が担保される必要があります。

 ソーシャルメディアにおいて、恣意的に『表現の自由』が制限され、ユーザー、国民を監視するようなツールと化すことは、プラットフォーマーが専制国家に組み込まれるような最悪の事態を意味しています。不当に自由が制限されては、個人の活躍が最も重要なイノベーションのエコシステムは正常に機能せず、そのような歪なエコシステムはやがて自壊して、社会の進歩は止まってしまうでしょう。

 かと言って、今のままの無政府状態が許されるはずもなく、ソーシャルメディアのビジネスモデルは、民主国家との親和性を求められているのは明白です。

 今、ソーシャルメディアは、専制主義、監視社会の道具と化すか、今のまま効率至上主義、利益至上主義の無政府主義に堕するか、それとも、民主主義と融合して、きちっとCSRを果たし、真にユーザーのためのメディアとなるかの岐路に立たされています。その選択は、もう待ったなしなのです。



(3)効率ドリブンでユーザーが置き去りのサービス

 例えばターゲティング広告一つとっても、そのデザインは、効率ドリブンなもので、そのUXには数々の問題があります――

▶ターゲティング広告の問題点
①『過去のデータ』・・・ターゲティング広告は、過去のデータに表れた過去
 の嗜好に基づいており、必ずしも今現在の興味・関心の対象と一致して
 いない。
②『不一致』・・・何故そのような広告が表示されるのか理解できない事が
 ある。
③『不気味』・・・内心考えていたことが広告で表示されると、不気味。④『不愉快』・・・サイトを移ったり、ページを変えても執拗に同じ広告が
 出てきて不愉快だ。
⑤『ターゲティングバブル』・・・フィルターバブルになぞらえた造語です
 が、いつもいつも似たような広告ばかりだと、新しい発見はなく、
 飽きてしまうのではないでしょうか。
⑥『レッテル』・・・差別とまでは行かなくとも、「あなたはこういう人間
 です」とレッテルを張られているようで、不愉快だし、的外れ。
⑦『差別』・・・広告主のカテゴリー設定、属性の取捨選択は、一歩間違えば
 差別となる。

 『効率ドリブン』なターゲティング広告を放置するプラットフォーマーは、『アンビエント』でユーザーの人間らしさに寄り添う、『人間らしさドリブン』なデザインに生まれ変わったソーシャルメディアの優位性には勝てないでしょう。『効率ドリブン』なデザインは差別化され淘汰される運命にあるのです。ここでもやはり、待ったなしの競争が始まっています。



 今、ソーシャルメディアは、その脆弱性と、長年放置してきたCSR、そして、効率ドリブンなサービスのデザインがもたらすユーザー離れによって、自らをリデザインしなくてはならないギリギリのタイミングに差し掛かっている、と考えられます。
 皮肉な事に、今、最もDX(デジタルトランスフォーメーション)を必要としているのは、巨大IT企業自身なのです。

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