『天使の翼』第11章(60)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~
「そのタイムリミットは守った方がいい」
シャルルが、即座に判断を下した――早過ぎる位に――。
「随分冷たいわね」
「そうじゃないことは、君が一番よく分かってるだろ」
シャルルは、とっておきの笑顔を見せた。
ローラは、肩をすくめる。別れのことはあまり考えたくない、という素振りが見えた。
「――もう一つは、大学に連絡した後、ワームホール・ネットに配信されてる情報に目を通したんだけど……もちろん、フランクなんて入力して検索はしなかったわよ――フランクのフの字も無かったわ」
わたしは、再びシャルルと顔を見合わせた。
彼は、頷き返してきた。
――フランク長官は、ミラー一派と共に帝国へと越境してしまったのだ……そして、公国は、この件を黙殺する、と云う政治的判断を下したようだ。この微妙な時期、植民惑星省の高官がいともたやすく誘拐された――もちろん、事実は違う――などという事は、あってはならない事なのだ。