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『天使の翼』第11章(66)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~
「あの帽子はいったい何?」
わたしは、一番気になることを聞いていた。
「フフフ。確かに帽子に見えるし、彼らの職業を表す記号だけれど、それだけじゃない。実用があるの……何だか分かる?」
そういうローラは、わたしからは想像力ある回答を得られないと思ったか、シャルルの方ばかり見ていた。我々は、しばし車窓の風景を忘れた……
「……マウンテン・デビルを捕獲する時に使う……」
やがて、シャルルが、自分の思考の流れを追うように言葉を紡ぎだした。
「……空を飛びながら…………あの帽子は、あの形のままとは限らない……」
「あの形、ロケットじゃない!」
……功を焦ったわたしの管見は、沈黙をもって迎えられた。
その間にも、列車は、縫うように山肌を駆け登っていく。やがて、何の前触れもなく、列車は、深く切れ込んだ谷間にかかった鉄橋の上を轟音と共に走り抜けた……
「グライダーだ!」
シャルルが、沈黙を切り捨てた。
「人間グライダーだ――深い谷間を吹き上げてくる暖かい気流に乗って空に舞い上がる……彼らのあの軽装備を見ただろ。山上に飛行機械が置いてある可能性もあるけれど、生半可な飛行機で、巨大なマウンテン・デビルを捕獲するのは無理だよ……空中で、マウンテン・デビルに飛び乗る――。その後はよく分からない。あの帽子は、翼に化けるのかな……」
「驚いたわね……」
ローラが、目を輝かせてわたしの方を見た。
わたしは、誇らしげに頷いた。