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売れ行きを見て品揃えをすると失敗する!?~万人受けvs.リピート率、どちらを取るか~

 日経電子版の記事【アサイー、つぶ塩…コンビニの棚から落ちたヒット商品】は、単純な売れ行き情報だけを見て品揃えを改廃すると、逆に売上が下がってしまう場合があることを指摘した好リポートだと思います。POS情報に潜んだ意外な盲点とは?



 まず確認しておかなくてはならないのは、『POSデータ』と『ID-POSデータ』の違いです――

▶二つのデータの決定的な違い

POSデータ=何が+いつ+いくらで+いくつ売れたか
       =売れ行き情報

●ID-POSデータ
誰が何と一緒に
        +何を+いつ+いくらで+いくつ買ったか
        
購買行動情報

 ――『ID-POSデータ』は、買ったお客と売れた商品を紐付けたビッグデータであるため、単なる売れ行き情報とは違って、顧客の購買行動まで踏み込んだ分析ができる訳です。

 つまり、『POSデータ』が『売れた商品が主体』の、極論すれば顧客視点の欠如したデータであるのに対して、『ID-POSデータ』は『買った顧客が主体』のデータである、と言えます。



 顧客視点の欠如したデータに頼っていては、品揃えを間違っても何ら不思議はありません。具体的なケースとしては――

▶POSデータを基にした間違った品揃えのケース

(1)POSデータを見て、売れ行きの悪い商品A(200円)をアイテムカット
   した。
  
⇨もし、商品Aのヘビーユーザーがいて、来店の度に繰り返し購入
   していたとします。しかも、そのお客さんの、他の商品も含めた
   購入金額が1万円近くあったとしたらどうなるでしょうか?
  ⇨商品Aを買えなくなったお客さんが他の店に行ってしまうと、店の
   売上は200円ではなく10000円落ちてしまいます。
   
このような事は、『ID-POSデータ』に基づいていれば起きません。

(2)POSデータを見て、売れ行きのかんばしくない新商品B(900円)を
   アイテムカットした。
  
⇨もし、最初のうち商品Bの総売上は低調でも、その中には、商品B
   の良さに気付いて繰り返し購入するお客さんが無視できない数
   存在したらどうなるでしょうか?
  ⇨商品Bは、その後、スロースタートで知る人ぞ知る隠れた
   ヒット商品になるかも知れません。POSデータを見てアイテムカット
   したばかりに、みすみす週販300個270000円の売上をチャンスロス
   するような事も起きかねません。
   
このような事は、リピート率の分かる『ID-POSデータ』に基づいて
   いれば起きません。

(3)POSデータを見て、売れ行き絶好調の新商品C(1000円)を、品薄に
   なる前にと1000個仕入れ、大々的に単品訴求した。
  
⇨もし、売れ行き絶好調に見える商品Cも、実はリピーターがほとんど
   いなかったらどうなるでしょうか?
  ⇨発売当初は話題沸騰で絶好調だった商品Cも、その後、線香花火の
   ようにパタッと売れなくなるかも知れません。POSデータを見て
   大陳したばかりに、1百万近い在庫を抱え、値下げロス・廃棄ロスが
   発生することになります。
   このような事は、リピート率の分かる『ID-POSデータ』に基づいて
   いれば起きません。

(4)新商品を投入するため、やむなく、そこそこの売上の商品Dを
   アイテムカットした。
 
  ⇨もし、その商品Dが、総体的な売上ではぱっとしないものの、
   特定の年代、例えば10代・20代の若い女性に偏って激売れしていたら
   どうなるでしょうか?
  ⇨そのお店は、10代・20代の若い女性の支持を失いかねません。その
   年代の女性客はがっかりすることでしょう。
   
このような事は、買った人の年齢層の分かる『ID-POSデータ』に
   基づいていれば起きません。



 『POSデータ』だけを頼った結果の失敗は、他にも多くのケースがあるかも知れません。確かな事は、『売れた商品が主体』の『POSデータ』では、万人受けのする売場は作れるかも知れませんが、顧客視点に立った個店対応は難しいという事です。顧客視点に立てば、販売数量の少ない商品も場合によっては非常に重要で、販売数量の少ない商品の重要性の指標となるリピート率をはじめとしたビッグデータは、『ID-POSデータ』が頼りなのです。

 ストアロイヤリティに直結する『高リピート率商品』は、非常に大切な『来店誘因商品』であり、また、『ブーム兆候商品』でもあると言えそうです。








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