『天使の翼』第11章(57)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~
わたし達は、ローラに案内されて山岳鉄道のターミナルを訪れた。『山岳鉄道』という言葉の響きとはかけ離れた、超モダンなつくりに、わたしとシャルルは驚いた。十年ほど前、改良型の、勾配とカーブに強い車両が投入されたのにあわせて、駅舎も改装されたという。
「途中のハイ・アンコーナまでは、超特急よ」
アンコーナの山手にある駅舎は、何も知らずに案内されたら宇宙港と勘違いしたかも知れない。しかし、『超特急』、その車両は、宇宙船とは似ても似つかなかった。一言で言えば――
――蛇。
地形に合わせてS字型にくねったホームから見ると、鉄道と云う名の通り、最近では滅多に見なくなった2本のレールが敷かれており、その上に乗った車体は、先頭部から最後尾まで一見して継ぎ目らしいものが見当たらない。のっぺりとした外観は、銀色のメタリックな光沢に包まれている。この、車両とは言っても、連結器もなく、一本の長いチューブのような物体は、全長200標準メートルはあった。ドアーと窓があるのは当然として、それがこのくねくねと自在に曲がるに違いない車体表面に、一体どのようにして組み込まれているのか?……
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