『天使の翼』第11章(59)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~
ローラが少し離れたホームの柱の脇で端末に向かっている間、わたしは、シャルルと二人きりなのを意識した。……どうしたことか、何をしゃべればいいのか分からない。個人的なことはさておき、今回の使命のことでも、話すことはいっぱいあるはずなのに……
その時だった。シャルルがびっくりするような大胆な行動に出て、あっさりとわたしの心を癒してくれた。――いきなりわたしの肩をつかんで、そっとキスしてくれたのだ。
「愛してる。君と二人で必ずこの使命を成し遂げてみせる」
わたしは、ごくりと唾を飲み込んだ。――二人の間の絆を、これほどはっきりと感じ取れる瞬間があるだろうか。
「何見詰め合ってるのよ!」
ローラの声に、わたしとシャルルは、二人して慌てて振り返った。
ローラは、憎々しげな風を装ってわたし達を一睨みしてから――
「二つ、伝えておくことがあるわ――」
そして、真剣に視線を据えてきた。
「――一つは、大学の新年度のこと。グラン・サンスであと標準1ヵ月先、ということは、ここには、長くて十日位しか居れない」
わたしは、シャルルと顔を見合わせた。――十日も行動を共にしてくれたら十分なような気もするが……
「――公立だから融通が利かないのよ」
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