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『天使の翼』第12章(74)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 わたしは、目を見開いた。――あと数秒であそこを!
 そして……やんぬるかな、やっぱり目を瞑ってしまった。エリザの逞しい首に指先から足先まで全身でしがみつきながら……
 フッと風圧が弱まった……先刻までのわたし達が大気を切り裂く槍のようだとすれば、まるで凧のように……
 恐る恐る目を開いたわたしは、盆地の中とはまるで違う弱い気流の中を、エリザの背に乗ってゆったりと滑空していた。眼下の風景は、つい昨日わたしがとぼとぼと辿ってきた荒野と似ていなくもない。ただ、地表の起伏は激しく、植物は一段と少ない。何かの鉱物が地層に現れてでもいるのか、淡いパステル色のクレヨンで塗り絵をしたかのように、色彩のパッチワークを成していた。 
 「盆地の中は、まるで別世界ね……ここは、荒涼として、でも、不思議な美しさがある」

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