吉野家、28年ぶりの決断~始まったか、外食のカスタマイゼーション競争?~
少し前の日経電子版の記事【吉野家、牛丼に新サイズ 28年ぶり 朝食もメニュー拡充】でリポートされている牛丼だけで6種類、というのはインパクトがあります。牛丼一つとっても6種類を品揃えして顧客の選択の幅を広げる、『盛り』のカスタマイゼーションと言えそうです。
記事では、牛丼だけでなく、朝食メニューとして「一汁三菜朝膳」6種類も販売するとあります。文字通り、『品目』・『サイズ』・『価格帯』を少しずつ変えたバリエーションでもって、あたかも顧客にカスタマイズのテンプレートを提供している感じです。
一般論として、飲食店でのさらなる本格的なカスタマイゼーションというのは広がっていくのでしょうか?
そもそも、私達が普段飲食店に行って感じる不満といえば――
▶飲食店の料理への不満――
① もう少し辛ければいいのに……
② もう少し甘ければいいのに……
③ もう少し大盛ならいいのに……
④ もう少し小盛りならいいのに……
⑤ もっと別の副菜ならいいのに……
⑥ もっと太麺ならいいのに……
⑦ もっと細麺ならいいのに……
⑧ おかずだけ大盛にならないかな……
⑨ トッピングを自由に選びたい……
⑩ もう少し固めがいいのに……
⑪ もう少し柔らかめがいいのに……
まだまだあるかも知れませんが、ちょっとした不満が色々とある訳です。この事は、逆に言うと、顧客のちょっとした要望に対応できるカスタマイゼーションが出来ていないが為に、顧客満足の最大化が出来ていない、いつ顧客が他に流れても不思議はない、という状況がごく普通にある、という事を意味していると思います。一人ひとり違った好みのあるお客のストアロイヤリティを高めるには、カスタマイゼーションという事が一つの大きな武器となるはずです。
このような、お客の好みに合った料理を提供する、というカスタマイゼーションを実際に施策として取り入れるとなると、いくつかの課題が浮かび上がってくると考えられます――
(1)手間とコスト
料理をカスタマイズするための手間とコストが余りにもかかりすぎるようだと、カスタマイゼーションは実現できません。飲食店のカスタマイゼーション施策と言っても、実際には作業効率とコストパフォーマンスがセットになっています。最も先端的な手法であるロボット化なども含め、効率的なシステムの構築が不可欠だと考えられます。
(2)分かり易い注文・決済のシステム
料理の注文に選択肢が増えるという事は、その反面で、注文が複雑化するという事でもあります。顧客がストレスレスに注文・決済できるシステムが伴っていないと、カスタマイゼーションの施策は逆効果に終わってしまう可能性があると考えられます。せっかく様々なバリエーションがあっても、選ぶのにストレスになっては、元も子もありません。IT化などの施策が必要そうです。
(3)フードテック
このように見てくると、飲食店におけるカスタマイゼーションの施策には、それを実現するためのシステム、テクノロジーが不可欠であることが分かります。食の分野のテクノロジー、フードテックの積極的な活用が有効な手段となるかも知れません。