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『天使の翼』第11章(3)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 わたしは、まず、基本的なことから思い起こした。わたしとシャルルの使命――それは、サンス大公国が、どのような経緯で謀叛に及ぼうとしているのか?そして、そのために絶対必要な聖薬をどのようにして手に入れたのか、探ること。……皇帝は、しかと言葉にした訳ではないが、場合によっては、それが最善であるなら、シャルルと二人だけで、阻止するための行動を起こさなくてはならない。
 姉弟の吟遊詩人に扮して旅をしてきたわたし達。この命がけの旅は、奇しくも、わたしの生き別れた家族の声に誘われてきたかのようだ……。わたしは、使命達成のためには兄への強い思いに振り回されてはならない、と心に言い聞かせなくてはならない――兄を捜して旅をしていると言えば絶好の隠れ蓑だが、それが許されるのは、使命達成のための道と重なっている時だけだ。
 わたし達の数奇な体験は、幾多の情報をもたらしてくれたと同時に、いくつもの陥穽を秘めている。
 ……帝国宰相の死にわたし達が絡んでいるということは、本当に封印され、外部に漏れてはいないのだろうか?
 ……フラージュ伯爵の死についても、わたし達が伯爵と同行していたという足跡は、完全に消せている訳ではない。伯爵家の家人達がどこか帝国軍の基地に無期限で拘束されているというのも、気がかりな点だ。
 ……そして、ペンテコステ家とその仲間、オーバーオーラー氏……
 ……フランク長官の狂言誘拐に最後まで付き合わず、逃げてきたこと……余儀ないこととはいえ、ローラと今現に同行している……言葉は悪いが、彼女の著名な宇宙考古学者としての人脈、利用価値と、お荷物であることとのプラス・マイナス……

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