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『天使の翼』第12章(65)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 彼女の前脚の爪が崖っぷちにかかり、首が、完全に断崖の上に出た。その逞しい首にしがみつきながら、思わず下を見たわたしは、その落差に驚愕した――100標準メートル単位ではなく、キロメートル単位の断崖だった。遥か下の密林が、絨毯の模様のよう……流れている川は、まるで巨人の落としたヌードルのようだ……
 風の音……下からの力強い気流で、耳がピュウピュウ鳴る……
 わたしは、上半身が徐々に下向きになっていくのを感じた。頭に血が上る……エリザが、首を思い切り下に突き出して、どんどん重心が前に移動して――
 (お、落ちる!)
 スッと、体が宙に浮いた。
 すぐに、強烈な落下が始まった――『飛ぶ』という概念からはかけ離れた、文字通りの自由落下――
 ゴーグルを着けていても風圧で目を開けていることなど到底不可能……もっとも、そうでなくても、恐怖で目を閉じていたに違いない……ところが、すぐに、わたしの心の中で、エリザを信頼する気持ちが充満してきた――それしかない、というのではなく、大丈夫だ、と感じられたのだ。

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