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『天使の翼』第13章(20)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 SSIPの地区本部へはアッという間だった。エアカーは、政府の合同庁舎の入った高層ビルの一つ、その屋上へと降り立った。
 それにしても、中尉殿はわたしとエアカーに同乗する素振りすら見せなかった。まだまだひよっこなのか、わたしという厄介ものを扱いかねているのか、あのデビルハンター捜査の指揮官だった少佐とは、貫禄その他が大分違う……
 我々は、中尉殿を先頭にかなり広いエアーカーポートを突っ切って、少しムッとする暑さの屋内へと入り、非常階段を使って、3フロア下にある地区本部へと向かった。この物々しい隊列は、終始無言で、鉄の階段を踏むブーツのカツカツという音だけが耳朶を打った。
 その間、わたしの頭の中はフル回転でこれから先のことに思いをめぐらせていた。むろん最終目的はグランサンスへと行くことだ……今回の一件がそのこととどう結びついてくるか……
 もちろん、何も起きない可能性は高い。わたしは、確かに世間を騒がせた(?)のかもしれないが、明白にそれと分かる悪質な犯罪とは訳が違う……これぐらいのことで、莫大な経費をかけて、グランサンスへと連行されるような事態にはならないだろう……

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