『天使の翼』第13章(11)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~
エリザの利き足である左前脚の爪先まで戻ったわたしは、ギターをケースから取り出し、エリザの顔を見上げた。
「エリザ、行くわよ!」
『よっしゃ!』
エリザがまるでスロープのように左前脚をそっと持ち上げ、わたしは、そこを勢いよく駆け上がった。エリザの左肩の上にカッコよく(?)足を広げて立ったわたしは、改めて周囲に集ったハイアンコーナの人々を見渡した。さまざまな色とスタイルの民族衣装が目に飛び込んでくる。ハイアンコーナは宇宙的規模の国際観光都市だ……
エリザの左肩に乗って歌うこのスタイルは、実はエリザの提案によるものだ。躊躇するわたしにエリザは――
『大丈夫。痛くも重くもないし、鱗でしっかりあなたのことを支えてあげるわ』
やってみると実際そのとおりで、わたしは、エリザの左肩というステージの上で自由自在にパフォーマンスできた。当然、地上で歌うよりも、観衆にはわたしの姿がよく見える。
「煩わしい前置きは抜き。歌うわよ!」
一斉に歓声が上がる。
わたしは、鼻先に人差し指を立てながら、とっさに一言付け加える。
「SSIPが来る前に、せめて一曲は歌わないと!」
会場がドッと沸いた。
わたしは、右手を勢いよくギター弦の上に打ち下ろした。