『天使の翼』第11章(36)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~
サンス大公国のような政治風土の国家にあって、『我慢のならない腐敗分子』を粛清したところで、全体の風通しが良くなるとはとても思えないけど……
「無理もないわね。第一公女の権力基盤である大公国宇宙軍とSSIPは、犬猿の仲だから。法的根拠が薄弱なまま拡大路線をひた走るSSIPは、それこそ階級章から装備に至るまでほとんど軍隊化していて、SSIP軍の存在は、国軍にとって到底容認できるものじゃない……国軍に言わせれば――実際そうなんだけれど――SSIPなんて無頼の徒でしかない訳……。そして、そのSSIPの一部勢力が、大公の覚えの目出度いセラ公女を担ぎ出す動きがあった、と云われているの――」
「そういうことを『云う』人は、君の情報源かい?」
ローラは、一瞬口をつぐんだ。
「私の大学の同僚で、政治学の教授――それ以上は聞かないで」
シャルルは、頷いた。
わたしは、全体主義国家の政治学教授は、さぞや窮屈な存在だろうと思った。
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