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『StaaS』(ステーション・アズ・ア・サービス)という発想

 日経電子版の記事【アパレル大手、試着は駅で 通販の弱点補う】で、ネット通販の弱点である『試着』の機会を駅に設けた拠点で提供しよう、という動きがリポートされています。



 そもそも、ネットとリアルには、それぞれに、ユーザーの買物体験を阻害する要因が存在しています――

▶買物体験の阻害要因

(ネットの場合)
 試着の機会がないので、サイズをはじめとして、着心地、フィット感、質感、色目、手持ちの服との相性、全体の印象などが定かには分からず、極論すれば、『買う』という行為が『賭け(ギャンブル)』になってしまっている。

(リアルの場合)
 店在庫という制約がある為、欲しい商品、サイズ、色柄がないなどの状況が発生し、『欲しいものが買えない』というストレスが生じてしまう。


 このようなネットとリアル双方で生じる買物のストレスを解消し、ユーザーにより満足の行く買物体験を提供するには、『ネットとリアルの融合』施策が有効であることの一つの事例が、『駅での試着』であると考えられます。

 ネットで欲しいものをチョイスして、指定した駅に取り寄せ、試着で確認するのです。『確認』という作業が入る事で、ユーザーには、そのまま購入、返品、リフォームという選択肢が広がり、買物に失敗するリスク、ストレスが解消され、買物満足へと繋がります。



 このような、買物には、ネットにもリアルにも不安がある、という『人間らしさ』に寄り添った、『人間らしさドリブン』なUXデザインは、結果として、アパレルにも、そして、宅配業者にもメリットをもたらします――

▶『人間らしさドリブン』なUXデザインがもたらすメリット

(アパレルの場合)
 百貨店向けに注力してきたアパレル大手がさらなる成長を成し遂げるには、ネット通販の拡大は急務だが、単価が大きいほどユーザーにとって試着できない事は不安材料。『駅での試着』がそのネックを解消し、新たな顧客に繋がる

(宅配業者の場合)
 アパレル通販で多く発生する返品を、駅で集約できれば、配送現場の負担を大幅に軽減できる。


 『ネットとリアルの融合』によって『人間らしさドリブン』なUXデザインを実現することが、結果として売り手(アパレル)にも社会(再配達・返品などによる配送現場の負担増という社会課題)にもメリットをもたらす『三方良し』を実現している訳ですが、その最大のポイントは、『駅』という存在を利用した事だと考えられます。

 自宅の近くの駅、会社の近くの駅など、ユーザーにとって都合のいい最寄り駅は、ユーザーにとってアクセスのストレスが少なく、ネット通販の拠点にする事で、アパレルや宅配業者の効率も向上します。ネットとリアルの結節点となれる『駅』には、ネット通販の拠点として大きなポテンシャルがあるのです。 


 このように、『駅』をサービスの拠点、サービスの場として捉える発想を、仮に『StaaS(ステーション・アズ・ア・サービス)』と呼ぶとするなら、『StaaS』に出来る事は、通販の配送先、配達の拠点、再配達の拠点、返品の拠点、試着等々に止まらない大きなポテンシャルが秘められているのではないでしょうか。社会インフラとしては、コンビニなどの比重の高まりが叫ばれていますが、『駅』の活用という事にもっと着目してよいと思います。

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