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『天使の翼』第13章(18)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~
エリザは、鎌首をヌッとわたしの眼前に差し出してきた。エリザの巨大なツルツルで湿りを帯びた深緑色の左目が、ジィーっとわたしのことを見詰めている。そこにわたしの上半身のシルエットが映っていた……
(こんなに近くて、焦点が合うのかしら……)
わたしは、彼女の硬くてぷにぷにの目蓋をそっと撫ぜた。
『まさか、泣こうとなんて、してないわよね』
「……エリザ……」
いつかはこういう時が来ると分かっていたけど、それは、あまりにも突然のことだった。……別れの瞬間の訪れをなるべく考えないようにしていた、というのもある……
まるで何かのスイッチを押したかのように、ぽろぽろ、ぽろぽろと涙がとめどなくあふれ出してきた。
『何も言わなくていいのよ』
「……エリザ……」
わたし、急に無口になっちゃったみたい。そんなわたしを、エリザの存在が、優しく、温かく包み込んでくれる。
実際に、体と、心が芯から温かくなってきた。
わたしは、両手両腕を広げてちょっとヒンヤリとしたエリザの大きな顔に抱きついた。
いつまでもこうしていたい。でも……
わたしは、ありったけの意志の力を借りて、エリザから離れた。
「ありがとう!エリザ!」
エリザが鎌首をうなずかせた。
わたしも頷き返す。