![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/119037990/rectangle_large_type_2_c4d2e80f161d6298c979a9980aa7cb83.jpeg?width=1200)
『天使の翼』第11章(88)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~
「――一つだけ。マイヤー教授と吟遊詩人のお二人は、連れですか?」
最後に微妙な質問。しかも、即答を要する――
「アンコーナの海岸を散策している時に意気投合したのです」
シャルルは、早かった。
危険な罠だ。ここで端末の渡航履歴を調べられたら――
この時、くぐもったような突然の怒声が、わたし達の思考の回路を瞬時に断ち切った。
「畜生!」
窓の外を見た指揮官は、身をひるがえし、自分の部下を突き飛ばすようにして部屋を飛び出した。
残されたわたし達三人、立ち上がって、窓に顔を押し付けた。
あれは、そう、デビル・ハンター三人が――独特の衣装のせいで遠目にも男二人女一人と分かる――急な斜面を脱兎のごとく駆け登っていく。走りながらも、両手で肩や腰の辺りを盛んにいじっているのは……例の人間グライダーとやらに化けようとしているのか?わたしは、そうに違いないと思った。この谷間を吹き抜ける風の力を利用して、大空高く舞い上がるつもりなのだ。そうなると、SSIPのエアカーでも追尾は難しい――そもそも、エアカーは、そんな高空は飛べない……だから、彼らは、逃走に命を懸けた――