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心惹かれる文章

 日々日経新聞の電子版を読んでいて、そこで得た知識をより深めようと思ったらどうしたら良いか?――方法の一つに、COMEMO(note)への投稿、というのがあると思います。

 いざ文章を書こうとすると、まず、新聞で得た知識、新しい概念を正確に把握し直す必要が出てきます。その概念のある程度正しい定義・背景等が分からなくては、論を進めることが出来ません。この段階で、普段新聞を読んでいて分かったつもりになっている事が、意外とその上っ面しか、ぼんやりとしか把握していなかったことに気付かされます。――文章化する作業が知識を深めてくれるのです。

 そして、投稿する以上は、自分なりの考え方、見方を表明する必要があります。もとになった記事、気になった記事を単に焼き直しただけでは、投稿する意味がありません。記事を読んでいて、「これって、あれだよな」、「あの件と結び付けると面白いな」、「より広い視野で見ると、もっと大きなものが見えてきそう」、「もう少し突っ込めば、より本質的なものが見えてきそう」、……様々な気付きを自分なりの言葉で表現してみるのです。――文章化する作業は、自分の意見、見方、見解を整理してくれます



 投稿という作業は、自分が記事から得たナレッジを、より深く正確にして、かつ、そこから自分なりの見解を導き出すことに繋がります。重要な事は、この作業を根気よく繰り返していると、最初は個々に独立していた様々なナレッジが、あたかも神経細胞のように連携を始めて、どんどん理解が深まっていく事ではないでしょうか……

 このように文章を書く作業をしていると、普段記事を読んでいて、自然とある一つのポイントに注目するようになります。――そのポイントとは、『論の進め方』です。それぞれの記事には、それぞれに『論の進め方』があって、枝葉の部分が豊かな『論の進め方』もあれば、太い幹に沿って一気に天に駆け上がるような『論の進め方』もあり、千差万別です。

 そして、タイトルに記した『心惹かれる文章』とは、まさに、この『論の進め方』が卓越した文章なのではないか、と思います。『論の進め方』が卓越しているためには、そもそも、言いたい事、結論部分がしっかりしている必要がありそうです。そこがはっきりしていないと、そこまでの道を敷くことも出来ないからです



 『心惹かれる文章』に出会う事は、新聞記事に限らず文章を読む醍醐味の一つですが、最近読んだ記事の中から一つだけ例を挙げるとするなら、日経電子版の記事【葉加瀬太郎さんを導いた「太陽の塔」】を挙げなくてはならないでしょう。



 この記事は、4541文字と少し長めですが、最後まで一気に読ませます。何故だろうと考えて、すぐに気付いたのは、文字通りその『論の進め方』です。

 一人の人物のそれまでの人生を語ろうとすれば、ごくオーソドックスには時系列で幼少期から始めるのかも知れませんが、そのような『論の進め方』では、ぼんやりと焦点のぼやけた退屈な記述になってしまう恐れもありそうです。

 それが、この記事では、まず、①人生の宝物(精神的なもの・人物・体験なども含む)5つを決めて、簡潔明瞭にその5つの宝物を表題にした5章構成になっています。そして、②具体的な宝物が画像付きで紹介されており、決して焦点がぼやけることなく5つの物語が語られます。不思議なのは、③5つの宝物に沿った物語でありながら、5つの物語が互いに共鳴し合って一人の人物が浮かび上がってくる事です。



 是非一読をお薦めしたい文章ですが、この文章の魅力をもう一つだけ付け加えるなら、5つの宝物の物語が、必ずしも時系列では並んでいない事です。だんだん人生の出発点に遡行していくのかと思えば、そうでもない。うまくは言えませんが、5つの宝物の並び順、章立ては、恐らくこれ以外にはありえないだろう、という順番になっています。……もしかしたら、この構成は、この文章を一つの音楽と考えればストンと腹落ちできるのかも……。一つの音楽のような『論の進め方』です。



#COMEMO #NIKKEI

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