その教育、科学的に効果が確かめられているの?『「学力」の経済学』
○○へ勧めたい:★★☆(教育に興味ある人)
そんな疑問を持ったことはないでしょうか?
そんなもやもやに対して、「科学的なエビデンス」に基づいた教育政策などを提言をされているのが、教育経済学者の中室牧子さんです。
国会でも教育政策について発言されています。
そんな中室さんが2015年に出された『「学力」の経済学』を読みました。
ここでは、本書に書かれている「科学的エビデンス」で、へ~と思ったり、なるほど~と参考になったものをメモ的に書き出してみたいと思います。
一つでも興味深いと思われたら、本書を読んでみてはどうでしょうか。
少人数学級化(40人→30人)は、学力にほとんど影響しない。
習熟度別学級はプラスの効果が非常に高い。特に学力が低い子たちへの効果が高い。
「勉強しなさい」の声がけは殆ど効果がない(むしろマイナス)。効果が最も高いのは、勉強しているのを見てあげること。
テレビやゲームは1日1時間までなら学習への負の影響はなく、むしろ他の能力が高くなる傾向がある。ただし、2時間を越えると学習への負の影響が飛躍的に大きくなる。
クラス(グループ)に優秀な子が入ってくると、上位層にはプラスの影響があるが、中間層と低位層にはマイナスの影響がある。ここから、自分よりも高すぎるレベルの集団に入ることは、マイナスの影響が考えられる。
学歴、年収、雇用の面で影響が大きい非認知能力は「自制心」と「やりぬく力」である。
学校の良し悪しは、家庭環境や遺伝と比べて、学力に与える影響は小さい。
ごほうびを与えるとすれば、「テストの点数」などのアウトプットよりも、「本を読む」「宿題をする」などのインプットに対しての方が効果がはるかに大きい。
教員研修による教員の能力向上効果はほとんどない。
教員全体の能力向上をあげる最も効果的な方法は、中途採用を増やすこと(そのために教員免許を廃止する)。
上記の中には、いろいろな教育本で見かける内容もいくつかあります。
ただ本書で興味深いのは、それぞれの結論の根拠となっている科学的な実験が示されていることです。
これらは、あくまでも実験の結果として統計的に優位な傾向が出たということですので、いつでも必ずそうなるわけではありません。
また、学力以外の要素(非認知能力など)も考慮すべきかと思います。
それでも、日本の教育行政が、そして僕自身も、このような科学的エビデンスをしっかりとキャッチアップしていかなければなと思います。