
3月1日(土)林家つる子独演会〜玉菊花魁「酔の夢」〜(ホテル座みかさ)



不破利郎(吉原商店会会長)挨拶
つる子 片棒
この地で吉原を舞台にした自作の新作落語をかけられる喜びと感謝を述べる。そして、ケチな人の話になり、本題へ。
この噺もつる子がよくかける。荒唐無稽な噺を林家つる子が最大限に盛り上げる。やがて観客を巻き込んでの大騒ぎに発展する。つる子師のラップのMCみたいなしゃべりがおかしい。
ー仲入りー
つる子 宵の夢
吉原のある大店に現れるホソキカズオという易者。今も昔の占いは女性に人気だが、その日もホソキのまわりに遊女が群がった。玉菊花魁の番になると自分ではなく、後輩のヨシノを占ってくれと言う。
ホソキはヨシノに芝居に出るようすすめる。芝居と言えば、近く吉原俄が行われる。吉原俄とは吉原で行われる年中行事のひとつである。吉原の芸者や幇間が素人芝居や踊りを披露する恒例のイベントだ。今年は通し狂言の『仮名手本忠臣蔵』がかけられる。
喜んだ玉菊はヨシノに「おかる」を演るのをすすめるが、ホソキは意外にも「勘平」をすすめる。男役のほうがヨシノには合うというのだ。納得いかない玉菊はヨシノに「五段目」で中村仲蔵が演じた「斧定九郎」を演らせる。
そして当日、芝居はやんややんやの大喝采で「ヨシノ屋」と掛け声が飛ぶ程であった。芝居がハネた後、ヨシノは玉菊にある告白をする。
8月に日本橋社会教育会館で聴いて以来、久々に聴く。つる子師も久しぶりにかけると言う。変えている部分はあったが、大きなストーリーの流れは変わっていない。元々の噺がとても良くできていたから、大きく変える必要はなかったのだろう。
花魁たちの裏の顔が垣間見える一席であった。まぶしい光の裏には必ず陰(影)がある。図らずも吉原に売られた遊女たちの悲しみ悔しさが高座から伝わってくる。
玉菊は実在した花魁である。お客だけでなく仲間の遊女や吉原で働く人たちにも人気があった。河東節の名手でもあった。酒が好きで酒のために命を落とした。彼女の死後、新盆になると吉原の茶屋の茶屋がこぞって玉菊を追悼する燈籠を掲げた。これが玉菊燈籠である。
この玉菊をモデルに林家つる子は新作落語を劇的に創り上げた。相当文献や映像などを調べ上げたのだろう。細かいところまでよく創りこんである。真打昇進からまもなく1年。彼女は次のステップに進んでゆく。
大丈夫。私はまだ酔いと夢からまだ覚めていない。
