さぬきうどん
香川で育った僕の夏休み、家で食べるざるうどん、しょうゆうどんは日常だった。
好きなだけざるに入れ水ですすぎ、醤油か出汁を入れて食べるだけ。
子供にでも出来るインスタントな食事。
うどん玉があるだけで、父と母は楽に仕事に迎えたはずだ。
そんなありがたみに気がつくのは、地元を離れて、食卓ではなく一人暮らしになり、自由気ままに選べるようになった時だった。
特別にこだわりがあるわけでも、愛してやまないわけでもない。
だけど、夏の食卓にあるうどん玉と、ざるに入れて水ですすぐ完食、少し水っぽい醤油うどん、すすりながら見る夏の朝のワイドショー。
土曜日の吉本新喜劇。
そういう時間がたまらなく愛おしいものだったと、都会で過ごしている時にふと気がつく。
子供の頃の育った思い出は、いつもふいに心をノックしてくる。
うどんを食べると、戻りたくても戻れないあの頃に触れるような、愛しく優しい味がする。
それが、さぬきで育った人の「さぬきうどん」なのです。