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お前のオーラはグレーだ

「第二の京都だから」街並みを眺めていた僕に先輩は言った。
数年前。CM撮影の仕事で金沢へ行った。

風流を感じさせる街並みがとても気に入った。

久しぶりに会った先輩との会話は話が尽きなかった。


「お前のオーラはグレーだ」


会話の途中で唐突に言われた。

え?
いきなり何?
オーラが見えるの?この人・・
っていうかグレーって・・・どうせならもう少し気持ちのいい色を言って欲しかった


先輩は続けた。

「その奥に虹色が見える」

オーラが見えない僕は先輩の言葉に高揚した。
人間って本当に単純だなって思った。

僕自身が確認できないけど、人から言われる言葉にこうも簡単に気持ちの浮き沈みの舵を取られるなんて。

人間っていうか、僕が自身が単純だ。

朝の占いで1日のモチベーションも変わってくるほどだ。
だから見ないようにしている。

そんな単純じゃねえんだこの人生は!!

という感情を思い出しながらYOUTUBEでタロット占いの動画を流している。


それから先輩はアドバイスをしてくれた。



奥に虹色があるんだけど、周りの人はその虹色が見えていない。

まずはお前が前に出ているグレーを薄くしていけ。
そうすれば周りの人はお前の虹色が見えるようになるから。


唐突に始まったスピリチュアル話は終わりを迎えた。
僕自身自分を曝け出すのが恥ずかしい。
それがグレーということになるのか。


役者として心を燃やしていた頃。

役者はステージ上が自分を曝け出す仕事なんだから普段の生活ではどんなギアを入れてもいいようにニュートラルにしておかないといけないと自分に言い聞かせていた。

オートマではなく、マニュアルの車の免許を持っている人ならわかると思うが、

ロー。セカンド。サード。トップ。と走り出したらギアを道に合わせてギアを切り替える必要がある。

車のギアのところに表示してある「N」がそれです。(そもそもオートマでニュートラルっていつ使うの?)


ギアを飛ばして入れると故障する可能性があるので、いきなりセカンドが入れることができず必ずローからギアを入れていく必要がある。(僕のおじいちゃんは軽トラを運転する際いきなりセカンドから入れてエンジン音バリバリ吹かしながら走っていたので、いきなり壊れることはなさそうだ)


普段の生活では、あまり感情を出さずに暮らしていたので、グレー色が増していたのだろう。


それから数年。
グレーを薄くする方法は見つかっていない。
自分を曝け出すのは、ステージ上以外はなかなかできない自分と過ごしている。

将来が一切見えないこの世の中。
エンターテイメントの世界は特にそうだ。

やりたいことをやり続ける覚悟というのは相当なもので、やりたいことをしながらバイトをしたりして過ごしている人は、日本だけではなく、海外で活動している表現者はたくさんいる。

この先どうなるんだろうとふと思った時にYOUTUBEでアドバイスがわりにタロット占いを聴くことがある。


特定の人のタロット占いと聞いている訳でなく、おすすめで出てきた人や、再生回数が多い人を探して聞いている。


人間はやはり単純で左右されやすい生き物だと毎回実感している。
今回この記事を書くきっかけになった占いを聴くことになった。(前置きが長くてすみません

たくさん考えて頭の中を忙しくしていくと自分でもわからなくなるくらい毎日が目まぐるしくなる。
自分がわからないと周りの人はよりわからないから自分の姿を見せることがより怖くなる。

たくさん考えてたくさんの想いを混ぜていくと、絵の具と一緒でグレーになっていく。筆を洗う時、青や赤や黄色と使っているのにバケツの中はグレーになり汚れてしまう。

しかし、その色を紐解いていくと、一つ一つの色が鮮やかで意識がはっきりしているものだ。


このグレーの正体を知った時に「お前のオーラはグレーだ」の言葉を思い出したのだ。


そうか。グレーって一色じゃなくて色んな色が混ざった色なんだ。


奥に虹色があるんじゃなくて、もう前面に虹色があるのにも関わらず僕自身が自分の色を見極めて出していないからグレーとして提示しているのかもしれない。


外壁の色をグレーにする利点の一つに汚れを目立たせないというのがある。


まさに僕自身だ。
自分がどう思っているのかを周りに隠している姿が垣間見える。
本当は傷ついているのに「え?いま蚊が止まった?」と強がっている。
本当はめちゃくちゃ痛いのに。

痛みを隠し続けていると、自分がいま何を感じているのかもわからなくなる。

普段は大人しくステージ上では咲き狂う役者に憧れて常に感情をニュートラルに入れていたらいつの間にか自分の心の位置がわからなくなったという何とも間抜けな話。


野望だけは昔からあって根拠なき自信だけで走ってきた。その結果今のグレーが仕上がったのならそんな自分自身の頭を少しばかり撫でてあげてもいいなって思った。

「お前は不器用な奴だ」

この先僕自身がどう人の前に立って表現していくかわからないけど、少しだけ自分のグレーが可愛く思えた。

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