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60歳のおばさんは「アップルウォッチ」で電車に乗れるのか

時計がたったひとつのアクセサリー

時計が好きだ。
軽くて美しい時計が好きだ。

指輪もネックレスもイヤリングもしないわたし。

時計はたったひとつのアクセサリー。
わたしの気分をあげるもの。
美しくて和むもの。

重い時計は疲れてしまう。
だから極力軽いもの。 

年齢を重ねて、ふたつの時計を交互にするようになった。

革バンドが手首になじむ。キラキラ加減に気分が上がる。


世界時計を兼ねている。色はピンクゴールド。


改札口でアップルウオッチ をかざして通る人を見かけた。
とても便利だという記事も読んだ。 


大きくて重たそうなアップルウオッチ。

「時計はおしゃれじゃなくっちゃね」
わたしには関係がなかった。
ふたつの時計を大事に使ってた。


怒鳴られた

「おばさん、 のろのろ歩いてるんじゃねーよ」

2年前のある日、追い越されながらいきなり怒鳴られた。
おどろいて体が固まった。

朝、 通勤通学の人でごった返す駅の改札前だ。
Suica (JR東日本のICカード)を出すのに手間取っていた私。
きちんとネクタイを締めた男性(20代後半くらい)は、
あっという間に人ごみにまぎれて見えなくなった。

カードを出しやすいようにリュックのポケットに入れていても、
改札の前では歩みが遅くなる。

それから改札口で緊張するようになった。
たまたまSuicaの残高が足りず
目の前でバタンと扉がしまった。
うしろにいたかわいらしい女子高生が
「チッ」と舌打ちをしながら別の改札を通っていった。

還暦祝いにお願いする

「還暦のお祝いは何がいい」と夫が聞いてきたのはそんな時だった。
夫と娘が合同でプレゼントをくれるらしい。

改札口で見かけたアップルウォッチの人を思い出した。 
あのスマートさ。

怒鳴られたときを思い出した。
くやしかった。
じゃまだったとはいえ、あの言い方はない。

時計はアクセサリー。
キラキラ、気分をあげるもの。
美しくて和むもの。

アップルウオッチは若い人のもの。
便利だけど、わたしには使えない。

でも、のろのろしている自分がいやだった。
改札前で緊張するのも苦痛だった。
これがあればカンタンに通れる。
かざすだけでいいんだもの。
だとしたら・・・・使ってみたい。

よおし、 決めた。
「アップルウォッチが欲しいです」

アップルウォッチがやってきた

こうして、アップルウォッチがやってきた。
手につけてみる。やっぱり重い。
画面が今までの時計よりも3倍ちかく大きくて、
時計っぽくない。

Apple Watch(ナイキバージョン)


ビミョーなわたしの反応を見て
夫と娘は「大丈夫なの?」と不安顔。
本当に使いこなせるかどうか心配している。
60歳だから。
おばさんだから。

ええい、わかった。
設定に関して、家族の手は借りないと決めた。
自力で快適な改札口スルーを目指すのだ。
それでこそ、かっこいい還暦なのだ。

2週間放置からの

大丈夫、できるといいながら
Suica を Apple Watch にセットする画面だけで心折れた。

appleの説明画面、だんだんわからなくなる


気が付くと、2週間放置していた。

やっぱり無理だったんだ。
還暦でウェアラブル端末の設定なんて出来っこない。
夫に謝って、誰かに引き取ってもらおう。

そう決めた翌日、以前通っていたスクールの先生と食事をした。
70歳を超えているのにセミナーを主催し、パワフルに動き回っている。
魅力的な女性だ。

先生はキャリーケースをひいてあらわれた。
レストランは地下にあって、表通りから急な階段を降りていく。
先生はケースをさっと持ち上げると、足取り軽く降り始めた。
「先生、私が持ちます」
「いいのいいの、このくらい」

アップルウォッチの話をすると
「できないってわかってから、あきらめなさいよ」
と、こともなげにおっしゃる。
私はあっけにとられたが、妙に納得した。
先生は失敗を恐れない。
そっか、とりあえずやってみるか。

「設定」の嵐が吹き荒れる

そこからは「設定」の嵐が吹き荒れた。

簡単に説明すると
・考えられる限りの設定をしてみた
・改札口に挑んだがあえなく失敗した
・心折れたが「おばさんだからできない」と言い訳していることに気づいた
・もう一度設定の嵐のなかを突き進んだ
・改札が通れた。残高不足で扉が閉まることもなくなった。
・電子マネーの設定もした。
・洗濯機やドアホンと連携

Apple Watchの画面いろいろ


心電図をはかる

年令からくるおとろえを、新しい技術で助けてもらう。
新技術に頼りすぎずにうまくつきあう。
アップルウオッチで違う世界が見えてきた。


思い込みが変わったら

便利なアップルウオッチだけど
今までの時計をしたほうが心がなごむ。
うん、両方いい。
こうしてわたしの中でふたつの思い込みが変わった。

1、いろいろな時計があっていい。アクセサリーであったり、生活アシスタントであったり。 

2,年齢を言い訳にしなくていい。60歳のおばさんでも Apple Watch の設定をして改札口を通り抜けられる。


改札口で怒鳴られたとき、ノロノロしてる自分が嫌いだった。
ああ、年は取りたくないなあって。
今は、スムーズに改札口を抜けられる。

設定をがんばった自分を、好きになれた。

きっかけを与えてくれたあのネクタイ男子には、今となっては感謝している。
きっと会社に遅れそうで、イライラしていたのだろう。

でも、もう怒鳴らないでね。



(以前のnoteをリライトしました)

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