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半
2023年7月29日 09:20
町内放送の声で目が覚めた。 以前よりも田舎の町に引っ越してきた。公民館のすぐ目の前。 ここの町内放送はいつも五分前になった。朝は6時25分。お昼は11時55分。 スピーカーから出たくぐもった声が空を覆い尽くしてそれに呼応するように一斉に蝉の歌声が響いた。 まだ重たい瞼をゆっくりと持ち上げるように顔を擦った。 同居人はすでに起きて朝ご飯の準備を進めている。どうやら卵が無いようで、私は頼ま
2023年7月13日 18:15
暑い。とにかく暑い。頬を伝う汗が制服につかないように腕で拭った。 アスファルトの上に蝉の声が反響している。遠く向こうの方の道は波うって見える。あの波の正体が「陽炎」というものだということを最近授業で教えてもらった。 あの角を曲がれば、クラスメイトの家がある。赤い屋根の二階建ての一軒家。緑が映える庭には、小さな小屋がある。その庭で、水を撒く女。この暑さには似つかわしくない白い肌と高く上を見上げ
2023年7月27日 02:12
目が覚めた。カーテンから漏れる光の線がまだ夜ではないことを教えてくれる。私としたことがついつい眠り過ぎてしまった。いつもと変わらない天井。隣には愛しの彼。彼のスマホのバイブレーションに呼ばれたのだが、どこから鳴っているのか分からない。どうやらフローリングの上を飛び跳ねているようだ。ベッドと壁の隙間に手を伸ばした。彼を起こさないように消音のスイッチを切る。スマホの画面には、「おばあちゃん」と書かれ