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かさぶたカサカサお受験記(4)復活の国立対策と、運命の電話が鳴る【後編】
(注)第4話~第5話にかけて某国立小学校の学校名を明記しています。昨年twitter(X)でも受験を公表していたのでそのまま掲載していますが、その内容は私の主観がかなり入った偏ったものになります。記事の内容=真実ではない点お見知りおきください。noteやtwitter(X)には、正しい情報発信&解説してくれている国立小学校のプロがたくさんいらっしゃいます。ちゃんとした人のちゃんとした記事を読んで参考にしてくれよ!厚子を信じちゃいけないよ(泣)!
「厚子さん、しらん番号から電話なかった?」
火曜日の午前、夫からLINEが入る。東京壊滅により更なる絶望的壊滅を起こしていたジルコニアンズを治療する為に歯医者にかかっていた厚子のスマホにも、確かにしらん番号から着信が残っていた。
「あったわ~。でもなんだろう、どっかの営業?」
「いや。俺はこれ、繰り上がりの連絡だと思う」
ぷぷー!!
厚子は噴き出した。
この時期、厚子はすべての私立小学校を疑っていた。
そんな早々に補欠などまわってくるものか。なんならつい最近江田の結果が出たばかりではないか。万が一億が一繰り上がりのご縁があったとしても、こんなに早い段階(11月下旬)で我が家にそんなミラクルハッピーが起きるわけはないのだ。ないないないない、ないよりのない。夫よ、ポジティブが過ぎるぞ。
また、厚子がここまで補欠が回らないと踏んでいたのにはもうひとつ理由があった。
ここだけの話だが、厚子はお茶の水女子大付属小学校に一方的かつ並々ならぬ運命を感じていたのだ。
埼玉の誤算、神奈川の撃沈、東京の壊滅を受けて、昭雄による火の鳥延長戦。ここまで我が家が苦汁をなめたのは、最後の最後に運命の相手と出会うための壮大な振りであったのだと、スクラップ&ビルドの壮大なストーリーを思い描いていた。四十路のリトルマーメイド再来である。(馬鹿である)
そして、茗荷谷3校の中で最も我が家に適していると密かに確信していたのもまた、このお茶の水女子大附属小学校であった。
お茶の水女子大付属小学校の考査は、そのほぼすべてを対話で行うノンペーパー形式だ。
5秒歩けば10言しゃべる、苦手なことは口を閉じること、嫌いなことは黙ること。べしゃりの神であり東の明石家さんま師匠である息子が、ここでこの能力を発揮せねばいつ発揮するというのだ。
また、親に課せられる試練も独特だ。
考査数日前に講堂に集められ、その場で発表となるお題に対して即興で作文を書くという、親の瞬発力と作文力と常識力と企画力を一気にまとめて試されるこの苦行。
ーもらった。
厚子はひそかにガッツポーズを決めていた。
常識力以外は完璧だ、これはもう私の為に存在するような試験である。
「かさぶたさんは、国語と同じくらい他のお勉強もできていたらもっと違う人生があったのにねぇ…」
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と担任教師の頭を悩ませていたティーンの厚子。センター試験で国語192点をとることで日本史54点をカバーした女である。(ちなみに日本史は高3時点で毎日3時間勉強したにも関わらずの54点である。本当に勉強が向いていないNE★)
その後の人生において一切活躍する機会を得なかった国語力を今発揮しないでいつ発揮するというのだ。(本日2回目)
むしろ我がに右手に国語の神が宿りし理由は、この作文試験の為であったのではないか。いやそうに違いない。神からの啓示だ!私はお茶の水小学校の保護者作文を書くためにこの世に生まれ落ちたし、ヨシコが遠い東北の地で娘を生み育てたのは、お茶の水の作文を書かせるためだったのだ…!!!
我が家は国立だ、お茶に行くんだ。お茶に行く運命だったのだ。なんならお茶がいま目の前でお茶を沸かして待ってくれている。我が家の到着を今か今かと待っている。飲もうぜお茶、交わそうぜティーカップ。まってろ茗荷谷!!
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そう(勝手に)心が決まっていた厚子を無視してしらん番号に折り返した夫から、それが繰り上がり合格の一報であった事実を告げられる。
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厚子「え、マジで。マジなの?」
夫「マジだったよ!厚子さん、よかったねぇ。本当によかったねぇ…」
ちょっと泣きそうになっている夫に対し、現実が受け止めきれない妻はあらぬことか暴走妄想超特急に変貌する。
厚子「え、振り込む入学金振り込む?私立全滅だと思ってて用意してた入学金、国立の教室にぶっこみ始めてるんだけど…」
夫「…厚子さん何言ってるの?あんなに行きたがってた〇〇小だよ。え?大丈夫?」
厚子「いやだってまだ心の準備が。っていうかぼっちゃんは補欠で入ってついていけるのかな…え、いやだってうちに補欠回ってくるとかありえないと思っちゃってて…え…え…」
夫「厚子さん…」
厚子「いやでも、いけると思わない?お茶の水小学校。親の作文と面接と、息子はノンペーパー考査よ。あの試験内容っていったら我が家の為に存在するようなもんでしょ。もうこれは運命だよ、我が家はお茶に呼ばれているんだよ…いやそうに違いないわマジで。」
夫「厚子さん…」
厚子「ここでうっかり他の学校に浮気したのがばれたら、あっさり振られるよ。どうみてもあっちの方が格上じゃん?カップルとしてアンバランスな今、ここで浮気なんて愚行を犯したら即崩壊だよ振られるよ。相手は日本を代表するバチェロレッテだよ、ローズもらえなきゃ即終了だよ!」
夫「厚子さん…」
厚子「だってお茶はモテるんだよ?我が家じゃなくても幸せにしてくれる家庭を選び放題なのに…そんなぬるったいこと言ってたらマジですぐ振られて再構築不可能よ。せっかくのご縁なのに!ここは我々も退路をたって、本気の気持ちをぶつける時だよ!玉砕覚悟で特攻すべき局面じゃないのか…!?」
夫「厚子さん…馬鹿じゃないのか」
東北の山に早めの冬眠に向うほど欲しかったはずの「入学」という権利が、どこかの誰かの辞退という尊い行いによって想定外に早い段階で今目の前に転がり込んできた。
にも拘わらずそれなのに電話越しの妻は意味不明な暴言を吐いて入学の権利を手放そうとしている。
浮気だとか愚行だとか特攻だとかバチェロレッテだとか玉砕だとか…
この女は一体何の話をしているのか。
お受験の悪魔に取りつかれ、妻は頭がおかしくなってしまった…夫の混乱はそれはもう妻をも上回るパンチの利いたものであったそうだ。(後日談)
そして、結婚して初めて夫に馬鹿と呼ばれた39歳は、まだ2か月も経っていない埼玉の後悔を見事にきれいさっぱり忘れていた。
冷静になった今なら分かる、私がどれだけの暴挙に出ようとしていたのか。人としてまっとうな道を踏み外そうとしていたのか。しかし当時は分からなかった。本当に分からなかったのだ。その時厚子は馬鹿日本代表になっていたから。
どうもこんにちわ、馬鹿です。馬鹿が服を着てお送りしています。皆さん初めまして
我は馬鹿日本代表、かさぶた厚子なり。
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夫の必死の説得によりやっとのことで正気を取り戻した馬鹿日本代表は、3週間ぶりにネイビースーツに袖を通し学校に走る。入学書類を手に入れその足で入学金を振り込むと、踵を返して茗荷谷のお教室へ向かった。
泥の涙を流しながら、喉から手が出るほど懇願した「合格」という名の一席をついに手に入れたかさぶた家に、その感動と喜びを分かち合う時間も余裕もなかった。
東の明石家さんま師匠、結婚して10年目で初めて妻を馬鹿と呼んだ夫、そして馬鹿日本代表の妻。
お受験界のずっこけ三人組、かさぶた家の最終決戦はもう数日先まで迫っていたのだ。
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