釣り堀で感じた”楽しめるようデザインされていない”遊びの楽しさ
「ほぅら!ほら!釣れたぁああ!」
妻が嬉しそうに魚を釣り上げ、迷うことなく魚をガシッと豪快に掴み、口に刺さっている針を器用に抜き、新しい餌をつけるとまた水面に糸を垂らした。
次男も嬉しそうに「やったー!このこと、今日の日記に書くんだぁ!」と声を上げた。
一方、隣にいるぼくと長男は20分経っても何も釣れていなかった。
「ねぇ、パパ、ぜんぜん釣れないよ…。」
長男にそう言われ、ぼくは申し訳ない気持ちを感じ、また魚に餌だけを食べられた針に新しい餌を付け替えた。
小学2年生になった双子の長男と次男は宿題で日記を書くことになっていて、そのネタのためにも今日はここに来たのだ。
だけど…。
釣れないのだ。まったく釣れないのだ。
妻は昨日もこの釣り堀に来て、店長に極意を伝授されたらしい。
妻から「面白かったよ!」と生き生きと言われ、次の日にみんなで来ることにしたのだけど、こんなにも釣れないとは思わなかった。
Switchのゲーム「釣りスピリッツ」ならガンガン釣れるのに。危険生物だって山のように釣れるのに。魚に電流だって浴びせられるのに。
この釣り堀では、ぼくは小さな金魚すら釣り上げることができない。
隣にいる三歳の三男は、緑色のねちゃねちゃした餌を小さなかたまりに分けて、ぼくに渡してくれる。これも昨日、この釣り堀のおっちゃんに教えてもらったらしい。
たくさん分けてくれるのは嬉しいけど、餌を付け替えるたびにそれは魚のご飯となって、いつの間にか濁った水の中に消えていく。
濁った水の中で魚が集まっているのは見えるのだけど、ツンツンと餌をつついていつの間にか餌だけかっさらっていなくなっていくのだ。
妻は「浮きがスッと沈んだらクイっと竿を上げるんだよ」と言うが、スッと沈む間も無くいつの間にか餌は消えているのだ。
餌の硬さを変えてみたり、餌の針に引っ掛ける方法を変えてみたり、竿を持ち上げるタイミングを変えてみたり、気がつけばぼくは真剣になっていた。
隣に子どもがいることも忘れて(まだ釣れないのー?とグズっている)、釣り糸を垂らし続け、ひたすら魚の餌となって消えていくネチャネチャした餌を釣り針に刺し続け、遂に終了時間直前になって、微かに沈んだ浮きを確認した瞬間、ぼくは竿をクイっと引き上げた。
すると、強い振動を感じたのだ…!
この振動は!釣りスピリッツと全然違う!!
不規則で予想ができない振動が竿から伝わってくる!!!
水を跳ねながら水中から現れたのは、わずか20cmほどの小さな魚だった。釣りスピリッツならほとんど点数にならないような魚だ。
だけど、その魚が水中から現れた瞬間を、ぼくは今でもありありと思い出せる。
飛び跳ねるように現れたそいつが体をくねらせ、大きく口を開けて空中を飛んでいる瞬間を今でもはっきり覚えている。
生きている魚を触るのなんて20年ぶりだったぼくが戸惑っていると、妻が慣れた手つきで魚をガシッと掴み、釣り針を魚の口から外してくれた。
「やった!やったー!」とみんなで大喜びし、ぼくらの初めての釣り堀体験は終わったのだった。
初めて釣り糸を水面に垂らしてから29分が経っていた。
◇
29分間も何も楽しみがない遊びなんて久しぶりに体験したような気がします。
最後の最後になってやっと釣れたけれど、不確実性があまりに高いこういった遊びはすごく新鮮だったんですね。
ゲームだったらユーザーが飽きないように所々に楽しくなる仕掛けや、適度な難易度設定がデザインされているけど、生の自然(釣り堀だけど)を相手にする遊びはそうはいかないんですね。
「絶対に楽しめる」という保証はなく、自分で楽しめる(釣れる)ように工夫をしないといけない。
あらかじめ楽しめるようにデザインされていない遊びの新鮮さと楽しさを感じた日曜日でした。(一匹も釣れなかったら辛かったろうけど)
ちなみに午後に訪れた公園では、隣接しているフライフィッシングの釣り堀を妻が真剣に見つめていたので、次はフライフィッシングに挑戦するつもりなのかもしれません…。
◇◇◇
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