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極楽試写会

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新作映画の試写会の案内もオンラインでの試写が増え、 気軽に自分なりに選んだ作品の試写をしております、 極楽気分で。 そんな中、皆さんにも見てほしいなと思った作品を紹介したいなと
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2025年1月の記事一覧

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「TATAMI」

映画『TATAMI』公式サイト https://mimosafilms.com/tatami/ 紹介のキャッチコピーで 「ポリティカルスポーツエンターテインメント」 という言葉があるということを初めて知った。 エンターテインメントをどう訳すかが難しいが 「政治的視点でのスポーツ魅了作品」 とでも訳すのだろうか。 世界柔道大会。 イラン代表女子が勝ち進む中で イスラエル選手との対戦が予想され これを阻止しようと イラン政府が本人に棄権を迫りあらゆる手段に出る。 従わなければ家族を拉致してまでの圧力をかけて。 政府の指示に従うのか、スポーツ人として自身の尊厳に従い出場するのか。 極限の決断を迫られる主人公が選んだ道とは。 事実をもとにした政治的スポーツドラマが展開される。 こうした単体のテーマ、それだけで十分重い、で貫かれたところに 見応えがある。 日本人だとTVなどで本当の柔道の試合の映像を見る機会は多い。 そしてそれは当然引きの画像が多いのでこれに慣れたる僕たちからすると 本作で多用されるUPの対戦映像に少し違和感はあるが 世界視野でみるとこれがエンターテインメント性を高める効果ある映像となっているのだろう。 一つ要望があるとすれば 「何故イスラエルの選手と試合をしてはいけないのか」 負けることを危惧しているのか?しかし、勝つことも半分あるのだから 何故なんだろう、イスラム的な考えなのか。。。 この点をもう少し掘り下げてもらいたかった。 最後に伝えなければならないポイント、 監督はイスラエル出身のガイ・ナッティブと本作で主演も務めたイラン出身のザーラ・アミールが共同でという 映画史上初の、イスラエルとイランをルーツに持つふたりが監督。 撮影は極秘で敢行され、映画に参加したイラン出身者は全員亡命した。 イランでは、当然本作は上映不可。 2025年2月28日 公開 @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 今月試写した映画 「Moirai」 Moirai : 作品情報 - 映画.com https://eiga.com/movie/103079/ 20225年1月24日 公開 「ステラ ヒトラーにユダヤ人同胞を売った女」 ステラ ヒトラーにユダヤ人同胞を売った女 - 株式会社クロックワークス https://klockworx.com/movies/stella/ 2025年2月7日 公開 「ハイパーボリア人」 『ハイパーボリア人』公式サイト | 2/8 (土)ロードショー https://www.zaziefilms.com/loshiperboreos/ 2025年2月8日 公開 「ジェイラー」 映画『ジェイラー』公式サイト https://spaceboxjapan.jp/jailer/ 2025年2月21日 公開 「死に損なった男」 映画『死に損なった男』オフィシャルサイト https://shinizokomovie.com/ 2025年2月21日 公開 「Underground アンダーグラウンド」  『セノーテ』『鉱 ARAGANE』小田香監督最新作『Underground アンダーグラウンド』2025年3月1日(土)〜ユーロスペースほか全国順次公開 https://underground-film.com/ 2025年2月中旬 公開 「犬と戦争 ウクライナで私が見たこと」 映画『犬と戦争 ウクライナで私が見たこと』|2025年2月21日(金)公開 https://inu-sensou.jp/ 2025年2月21日 公開 「ノー・アザー・ランド 故郷は他にない」 映画『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』公式|2025年2月21日(金)公開 https://transformer.co.jp/m/nootherland/ 2025年2月21日 公開 「聖なるイチジクの種」 映画『聖なるイチジクの種』公式サイト https://gaga.ne.jp/sacredfig/ 2025年2月14日 公開 「デュオ  1/2のピアニスト」 映画『デュオ 1/2のピアニスト』公式サイト https://www.flag-pictures.co.jp/duo-pianist/ 2025年2月28日 公開 「知らないカノジョ」  知らないカノジョ https://gaga.ne.jp/shiranaikanojo/ 2025年2月28日 公開 「TATAMI」 映画『TATAMI』公式サイト https://mimosafilms.com/tatami/ 2025年2月28日 公開

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「デュオ 1/2のピアニスト」

映画『デュオ 1/2のピアニスト』公式サイト https://www.flag-pictures.co.jp/duo-pianist/ 今ある、残る、身体機能を最大限に生かすことで素晴らしい能力が開花する。 事故や病で 身体的機能に支障が出たり障害が出たりした人が 乗り越えて活躍する姿には感動する。 自身のアイデンティティーを見出したその姿に。 本作はピアニストとして共に将来を嘱望された双子の事実に基づく物語だ。 幼少のころから 父親のスパルタ教育でナンバーワンのピアニストになるべく育てられた二人。 音楽の難関校に入学しSoloピアニストとしての晴れやかな道を歩むかに。 ところが 突如と遺伝性の骨の病が襲う。 しかも遺伝性ということで二人ともに。 ピアニストの道は閉ざされた、かに思えた日々、暗澹たる日々を過ごす中で 今ある、出来る機能を駆使することで新たなピアニストとしての道に目覚める。 またそこには、双子という特別な(ラッキーな)状況があった。 本来、右左の両手で 思いの演奏をすることが不可になった二人には 双子の4本の手で、お互いにおぎあいながら演奏するという道があった。 もちろん、これには特有な奏法が必要とされ 更に何よりも4本の手が2本の手となるような同期、というか阿吽の呼吸が必要になる。 そう、双子の二人にはそれが可能だった。 本作の父親は何事もナンバーワンにこだわり 自分自身も(小さな世界での)一番にこだわっている人物。 因みに 僕はこういう、人と比べての順番や肩書にこだわることが嫌いだ。 本作が描く父親はまさにこういう種族。 自然、この物語に出てくるこの父親像には賛成できない。 が、 試練を乗り越えた双子の姿が この肩書、比較論者だった父親の思考までも変えてしまった、良し! で、 この作品を観てすぐに思いだしたのが 館野泉だ。 「左手のピアニスト」としとしてご存じの方も多いだろう。 舘野泉 - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%88%98%E9%87%8E%E6%B3%89 ピアニストとして全盛期に脳溢血で倒れた彼は 右手の自由を失う。 ピアニストとして決定的なハンディーを負うが ここでくじけなかった彼は 残った機能、能力、左手で演奏を。 それはそうとう困難な道のりだったが 「左手のピアニスト」として見事に世界に帰ってきた。 また彼の姿に感動した数多くの作曲者たちが 彼のために左手だけのピアノ曲を作ってくれたりも。 この話はドキュメンタリーなどでも紹介されている。 主演女優を務める カミーユ・ラザとメラニー・ロベールは 演技はさることながら このピアノ演奏シーンは「本当!!」と驚かされてします。 また スタッフで特筆されるのは プロデューサーのフィリップ・ルスレ アカデミー賞作『コーダ あいのうた』(22)、『エール!』(14)、『ふたりのマエストロ』(23)などを手掛けた。 本作に続くのがうなずける。 2025年2月28日 公開

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「犬と戦争 ウクライナで私が見たこと」

映画『犬と戦争 ウクライナで私が見たこと』|2025年2月21日(金)公開 https://inu-sensou.jp/ 戦争でも災害でも 人が遭遇する悲惨な状況 必ずそこには犬も存在する。 人間と最も親しい動物であるがゆえに、 命と同居しているといってよいだろう。 監督、製作の山田あかね これまでに、小林聡美主演の『犬に名前をつける日』(2015/監督)や『犬部!』(2021/脚本)など数々の作品で犬や猫の命を描いてきた。 今回、戦争の地であるウクライナに目を向けた。 戦場にいる犬、そして人間を追った3年に及ぶドキュメンタリー。 そして驚愕する現実に対面する。 ウクライナでは犬を愛する国民性を持ち 野良犬でさえ、施設や市民に厚く保護されている。 犬と共に暮らすウクライナと言ってよいだろう。 多くの犬たちの保護施設が存在する。 そうした中、ロシアの進行により、運営者から取り残されたその施設に数週間閉じ込められた犬たちがいた。 500頭を超える犬たちは飢餓、飢えにより半数近くが餓死する。 この惨劇を中心にこのドキュメンタリーは進む。 こうした犬たちは 多くのボランティア団体に支えられている。 そうしたボランティアたちの中で 特に元イギリス軍の兵士で戦闘経験でPTSDで退役した人物にフォーカスする。 彼は元兵士であることでその経験値を生かして 危険な戦場現場から身を挺して多くの犬たちを救う。 彼のこうした行動の原点になったのは かつてPTSDで生きる目的を失っていた自分を救った「犬」の存在があったからだと。 そして 彼が始めた犬による負傷兵の犬による介護セラピーの場では 現実の戦闘で負傷した兵士たちの癒された姿も映し出される。 ナレーションは俳優の東出昌大。 また書いてしまうが 犬が大好きな僕です。 が、そうでなくともこの作品は一見してほしい。 また 時を同じくしてガザの戦場を取り上げたドキュメンタリー 「ノー・アザー・ランド」 映画『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』公式|2025年2月21日(金)公開 https://transformer.co.jp/m/nootherland/ 2025年2月21日 公開 を試写した。 こちらは ガザ地区でパレスチナ人とユダヤ人の友人二人を追った作品だ。 こんなドキュメンタリーが続く事が無い事を切に願う。 2025年2月21日 公開

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「あの歌を憶えている」

映画『あの歌を憶えている』公式サイト https://www.memory-movie-jp.com/ 普段は 大人の恋の物語という触れ込みの映画にははなんとなく軽さを感じて あまり見ないんだが・・・ ちょっと違う。 主人公の二人は50歳後半、お互いに問題や傷を持つ。 若年性認知症、幼年期の性的虐待など その傷や障害を乗り越える二人の心の交流が 僕には響いた。 そして 作品の中心をなすといってもよいのが 「プロコル・ハルム」の名曲「青い影」。 僕の世代前後には確実に大きく記憶に残る曲だと思う。 因みに僕は高校生のころこの曲のシングル盤を買って ポータブルプレーヤーで何度も何度も聞き返した記憶がある、感動して。 バッハのG線上のアリアを思わせるイントロ 一音づつ下がっていくベースライン ハモンドオルガンのシンプルな音色とそれがサビではレズリースピーカーを通した刺激的な音へ変化。 この曲に思い入れのある御仁は多いはずだ。 雑学だけれど 当初からこの歌の意味は難解だと言われてきたし 原題も「A Whiter Shade of Pale」で 直訳すると「白くなっていく青白い影」でシンプルに「青い影」ではない。 まっ、それでも邦題の「青い影」はそれで良い! ともかく 50年前の名曲をベースに 今の時代での特徴的なハードルを持った男女。 色合い、 撮影はニューヨークなのだが なんともいつものNYと色合いが違うと感じた。 監督がメキシコ出身ということもあるのか・・・? もしかして 全体を Whiter Shade of Paleっぽいトーンで統一し、曲の境の再現を狙ったからなのか ・・・・考えすぎか。 尚、主演の ジェシカ・チャステインは 「タミー・フェイの瞳」(2021)で、第94回アカデミー主演女優賞に輝いている。 2025年2月21日 公開

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「ハイパーボリア人」

『ハイパーボリア人』公式サイト | 2/8 (土)ロードショー https://www.zaziefilms.com/loshiperboreos/ 何じゃこれは!? いったいなんなんだ!? まずはこの言葉しか出てこない。 しかし、なんだこれは!?すごい。 でもこれは、すごい。 いやこれは、とんでもなく凄い。 これ以下でもなくこれ以上でもなく。 評は以上です。 では何の説明にもなってない・・・が 早くも 極楽映画大賞・なんじゃこれ部門ノミネート。 ストーリは(仮にストーリーと言えるものがあったとしてだが) 女優で臨床心理学者のアントーニア(アント)に幻聴に悩まされているというゲーム好きの患者が診察にくる。 映画監督レオン&コシーニャはその幻聴の話を知り、それは実在したチリの外交官・詩人でヒトラーの信奉者でもあったミゲル・セラーノの言葉だと気づく。 そして アントを主演にしたセラーノの人生を振り返る映画の撮影を始めるが それがいつしか謎の世界に入り込んでしまい チリの政治家ハイメ・グスマンから、チリの国家を脅威をもたらすことが記録された映画フィルムを探すよう命じられる。 (この説明では何が何だかわからんでしょ!でもこうなんだから) 監督は チリの監督コンビ、クリストバル・レオン&ホアキン・コシーニャ コマ撮り、マペット、映像投射、実写など ありとあらゆる手法がコンフュージョンにてんこ盛り。 でも、それが後々考えてみるとすごい計算されていることにも気づくかと。 第一作の 「オオカミの家」で世界的に注目を集めた。 去年この場でも紹介した。 「『オオカミの家』 併映『骨』」|極楽試写会/コラムンの犬 https://note.com/atoss_cinema/n/n4864bb2fefa5 その時の感想も「なんじゃこりゃ?」しかなかったが 長編第2作となる本作は この「なんじゃこりゃ!?」はただものではない、と確信した。 実名で登場する 主演のアントーニア・ギーセン 監督のレオン&コシーニャにいたっては何と!マペットで。 ・・・そう気が付いたのだが 前作「オオカミの家」の宣伝動画にインタビュー出演しているこの監督の後ろにはこのマペットが登場している!(かなりマニアック) ナチ、ヒトラーの取り上げ方 そしてチリ政治のダークな部分に対する レオン&コシーニャ監督の姿勢が 前作に続き見事に表れているともいえる。 そして同時上映の短編 2023年製作の短編「名前のノート」は ピノチェト政権下で行方の分からなくなった若者の名前をつづる。 尚 「ハイパーボリア」とは ウィキによると神話に出てくる大陸のようだが 本編には何の関係も無いようだ(たぶん) ハイパーボリア (クトゥルフ神話) - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%83%91%E3%83%BC%E3%83%9C%E3%83%AA%E3%82%A2_(%E3%82%AF%E3%83%88%E3%82%A5%E3%83%AB%E3%83%95%E7%A5%9E%E8%A9%B1) 2025年2月8日 公開

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「ステラ ヒトラーにユダヤ人同胞を売った女」

ステラ ヒトラーにユダヤ人同胞を売った女 - 株式会社クロックワークス https://klockworx.com/movies/stella/ 今年も また複数のホロコーストをテーマにした映画が公開されるのだろう。 本当にいろいろな視点で、いろいろな問題を提示した 作品が作られる。 本作も(こういう視点があったんだ) と思わせる。 第二次世界大戦時 ドイツ占領下の地域、 ユダヤ人であるがゆえに迫害がされていたのだが 当然それはユダヤ人であるという証明によって対象になっていたわけで 中には自身の出実、人種を隠して迫害から逃れていた人も多かった、 命を守るためにはやむを得ないこととして。 明らかに見た目でユダヤ系であるという人は別として 一見そうではない人々は時には偽造の身分証明を保持して ホロコーストの難を逃れていた。 本作は そうした最中に自身、家族がその悲劇から逃れるために ナチス側に同胞の存在を密告する役割の女性を描いた。 戦争前にはドイツでもアメリカのJAZZが若者の心をとらえ 本作の主人公たちは そうしたミュージシャンの集まりだった、が、メンバーはユダヤ系という。 仲間を裏切り 戦後は非国民として生きた 実在の元JAZZシンガーの姿を 過酷にも明確に。 これからも また数多くの、違った視点で この大惨禍を描く作品が生まれてくるのだろう。 監督のキリアン・リートホーフ 先日ここでも紹介した、パリでの同時多発テロを舞台にした 「ぼくは君たちを憎まないことにした」 ぼくは君たちを憎まないことにした : 作品情報 - 映画.com https://eiga.com/movie/99986/ で、記憶に新しい。また映画においての問題提示をしてくれた。 主演のパウラ・ベーア (僕は記憶にないが一応資料から) 「水を抱く女」(2020)でベルリン国際映画祭主演女優賞を受賞。 水を抱く女 : 作品情報 - 映画.com https://eiga.com/movie/92696/ 最後に記された言葉 ホロコーストの生存者から私たちへのこの言葉が 本編の意味を昇華させるごとく心に刺さった。 「君たちは過去の責任者ではないが 繰り返さない責任はある」 2025年2月7日 公開