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極楽試写会

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新作映画の試写会の案内もオンラインでの試写が増え、 気軽に自分なりに選んだ作品の試写をしております、 極楽気分で。 そんな中、皆さんにも見てほしいなと思った作品を紹介したいなと
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2024年7月の記事一覧

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番外編:「山の郵便配達」

山の郵便配達 : 作品情報 - 映画.com https://eiga.com/movie/51453/ よい物は良い! 2001年日本公開の旧作ではあるが、、、 夏の公開作品は 昨今の気候なのか、は、どうしても公開本数も限られていて この場で紹介する作品も限られてくる。 そうした最中に 先日NHK・BSで放送された本作に出合って「感動」! タイトルは知っていたが不覚にも見ていなかった。 時は1980年代中国の山間部。 まだ、あの国の経済騒ぎが始まる直前、 しかも、貧しい山間部、 そこにたった一人の郵便配達人、 足を痛め、20代の息子がその跡を継ぐ。 配達人は歩くことで、山間部を何日もかけて歩くことで 郵便物の集配を行う、自宅に戻るのはほんのわずかな時間。 一人息子は幼いころから そうした状況の中で 父の仕事を把握できず、ある時は怖い「おじさん」と感じ続けていいた。 しかし彼は自分から足を痛めた父親の役割を継ぐことにする。 ここから物語は始まるのだが、 寡黙に配達を続けていた父、 実はそこには地域住民との深い深い繋がりと思いが存在していたことを 彼は初めて知る。 初めての配達の旅、父が同行し、飼い主の犬を相棒にして。 見る者が触れるのは 父息子の心の交流、住民との素朴な絆、残してきた母に対する本当の気持ち そのすべてが あの時代のあの場所、 この舞台設定が見事に「こころの映画」を完成させてくれている。 邦題の「山の郵便配達」はそのままに良いタイトルだと思うし 原作、ポン・ヂエンミンの短編小説の原題「『那山 那人 那狗(あの山、あの人、あの犬)』 見終わった時に大きくうなずくことは間違いない。 スタッフ、配役含めて情報がなく その後彼らがどのような活躍をしたのか、 (間違いなくその実力はあるので) 活躍ができていることを切に願う。 1999年製作 日本公開日:2001年4月7日 参考 1980年代:改革開放の進展により「世界の工場」と呼ばれるほど経済が急成長 1989年:天安門事件 2012年:習近平が中国共産党中央委員会総書記、中央軍事委員会主席に選ばれる 【各配信プラットホーム で、見ることができるのでぜひ】 @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 今月極楽試写した作品 ・「めくらやなぎと眠る女」 アニメ映画『めくらやなぎと眠る女』公式サイト http://www.eurospace.co.jp/BWSW/ 2024年7月26日 公開 ・「夏の終わりに願うこと」 8/9 公開・映画『夏の終わりに願うこと』公式サイト https://www.bitters.co.jp/natsuno_owari/index.html 2024年8月9日 公開 ・「愛に乱暴」 映画『愛に乱暴』オフィシャルサイト 2024年8月30日公開 https://www.ainiranbou.com/ 2024年8月9日 公開 ・「夜の外側 イタリアを震撼させた55日間」 「夜の外側 イタリアを震撼させた55日間」公式サイト|8月9日(金)より全国順次公開 https://www.zaziefilms.com/yorusoto/ 2024年8月9日 公開 ・「ぼくの家族と祖国の戦争」 映画『ぼくの家族と祖国の戦争』公式サイト https://cinema.starcat.co.jp/bokuno/ 2024年8月16日 公開 ・「ポライト・ソサエティ」 映画『ポライト・ソサエティ』公式サイト|8月23日(金)公開 https://transformer.co.jp/m/politesociety/ 2024年8月23日 公開 ・「心平、」 映画『心平、』公式サイト https://www.shinpei.jp/ 2024年8月17日 公開 ・「美食家ダリのレストラン」 映画『美食家ダリのレストラン』公式サイト | 8月16日(金)新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座、シネ・リーブル池袋ほかにて公開 https://dali-restaurant.com/ 2024年8月16日 公開 ・「エターナルメモリー」 映画『エターナルメモリー』公式サイト https://synca.jp/eternalmemory/ 2024年8月23日 公開 ・「パドレ・プロジェクト 父の影を追って」 映画『Padre Project | パドレ・プロジェクト 〜父の影を追って〜』公式サイト https://padreproject.jp/ 2024年8月31日 公開 ・「助産師たちの夜が明ける」 映画『助産師たちの夜が明ける』公式サイト 8月16日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次ロードショー http://pan-dora.co.jp/josanshitachi/ 2024年8月16日 公開

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「心平、」

映画『心平、』公式サイト https://www.shinpei.jp/ 多様な障害・・・。 知的障害、自閉症の主人公 福島原発事故で田畑を手放し危険区域で警備員として生計を立てる父 離婚して実家に戻り、その環境になじめない妹。 こうした家族が 主人公の行動で どのような展開を見せるのか。 ・・・最後には涼風が見ている私たちの心を吹き抜ける。 共に30代で日本映画学校(現:日本映画大学)卒業の 監督の山城達郎と 脚本の竹浪春花。 しっかり学んでいる、その証だろう。 ところで 毎度書きますが 日本映画に疎い僕だからなんだろう 出演者の誰一人として知らない役者さんばかりだった。 が、皆、そう、皆が素晴らしく演じていた。 2024年8月17日 公開

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「ぼくの家族と祖国の戦争」

映画『ぼくの家族と祖国の戦争』公式サイト https://cinema.starcat.co.jp/bokuno/ 「歴史は勝者が作る」と言われるが、 逆に敗者、被害者に寄り添うストーリーがあり 映画はそれを事実として語り継ぐのだろう。 逆の視点、 見始めてすぐに思ったのはこの言葉だ。 第二次世界大戦時のデンマーク。 僕たちには知識として薄いが この国は周辺他国同様ドイツナチスに占領された。 市民生活はナチス支配下で大きく制限され過酷な状況であった。 そして 本作舞台にはそこに1945年4月という微妙な時が。 ソ連が対ナチス戦に反撃をはじめ 各地でドイツ軍の撤退、敗戦の色が濃くなる。 同時に各国に移住していたドイツ住民は即、難民として移動を差ざるをえなくなり ここデンマークでも(依然ドイツ占領下)ナチスの一方的な押し付けで 多くのドイツ人難民が押し寄せる。 デンマーク住民は今までのナチスによる過酷な仕打ちに対して その責任とは全く無関係なドイツ難民に対して 支援を断るだけではなく 支援しようとする同胞、主人公家族へも非難の目を向ける。 この映像はかつて何度も目にした ドイツ人によるユダヤ人迫害のシーンそのままに。 僕には象徴的に見えたシーンとして 病に倒れるドイツ難民を支援し町の住民から非難の目で見られる主人公家族 その長男が子供たちの戦争ごっこで 「お前はナチス役だ」と言い渡され 腕にあのハーケンクロイツの付いた腕章をつけられ デンマーク軍役の子供たちにいじめられる。 ・・・・これは正に、ドイツでユダヤ人がダビデの星の腕章をつけられて アウシュビッツに向かう貨車に詰め込まれるシーンではないか、と。 主人公、市民大学学長とその家族 同胞から非難の目、時には暴力にも会いながらドイツ難民を救う、 そして、最後は堂々とした姿でこの街を去る この雄姿、見る僕たちに尊厳とは何かを示してくれた。 監督・脚本 / アンダース・ウォルターは 1978年生まれ、デンマーク出身。 アカデミー賞で短編実写映画賞を受賞して さらなる活躍が期待される。 主人公の役の ピルー・アスベック 1982年生まれ、デンマーク出身。 自国だけでなくハリウッドでも活躍する実力者。 息子役の ラッセ・ピーター・ラーセン デンマーク出身。本作のオーディションで勝ち抜き、長編映画デビュー。 演技とは思えない子供ならではの本心が垣間見れた。 本年度 極楽映画大賞ノミネート! 2024年8月16日 公開

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「めくらやなぎと眠る女」

アニメ映画『めくらやなぎと眠る女』公式サイト http://www.eurospace.co.jp/BWSW/ 僕はいわゆるハルキストの一人かな。 デビュー作の(1979年4月発表)『風の歌を聴け』 からほぼリアルタイムで村上作品は全作追いかけている。 本作は 80年代から30年間ぐらいの最も充実した(と僕は思う)時期に書かれた 短編集からの6作品をベースにしている。 「かえるくん、東京を救う」神の子どもたちはみな踊る:2000年 「バースデイ・ガール」バースデイ・ストーリーズ:2006年 「かいつぶり」カンガルー日和:1983年 「ねじまき鳥と火曜日の女たち」パン屋再襲撃:1986年 「UFOが釧路に降りる」神の子どもたちはみな踊る:2000年 「めくらやなぎと、眠る女」螢・納屋を焼く・その他の短編:1984年 僕自身その時々に村上の文章で読んでいるからこそ強く言いたいのだが 脚本を書くにあたりこうした発表された時期もテーマもまちまちもあるものを 良くここまでまとめ、再編成し、 さらに このようなまとまった作品、映像化ができたものだと。 原作では阪神淡路地震が題材だったが 本作では東日本大震災に置き換えるなど 時間的な移行がされているだけでなく 主な登場キャラクターの一つ一つが丁寧に無理なくアレンジされている。 また、脚本だけでなくアニメ映像として 日本人の顔のつくり 日本の町のつくり 日本人のしぐさのつくり 多方面において日本人である僕たちには描き切れなかった 「日本、日本人」を描き切っている。 村上春樹はエッセイで 自分の著作過程を語っている。 まず、日本語で書き、それを英語に翻訳し そして最後にまた日本語でにすると。 英語版、日本語版のどちらが完成ということではないようだ。 そういう意味で彼の作品がグローバルな支持を得ている要因の一つだろう。 更に ずいぶん前に 駒場東大で開催された 村上春樹作品の世界の翻訳者が一堂に会するシンポジウムに行ったことを思いだした。 ここには日本語、英語だけでなく スペイン語、フランス語 それこそ多種多様な翻訳者が集い 彼の作品のすばらしさ それを自分が翻訳する事のすばらしさを語っていた。 本作はオリジナルの英語に加えて日本語吹き替え版も制作されている。 僕が見たのはオリジナル版で、 結果、先にオリジナル版を見ていてよかったと思う。 仮に後で日本語版を見たとしても。 資料には 監督のピエール・フォルデスは アカデミー賞短編アニメーション部門にノミネートされセザール賞を受賞したハンガリー人の父ピーター・フォルデスと、イギリス人の母の間にアメリカで生まれる。 パリで育ちピアノと作曲を学び、ニューヨークで映画や広告音楽の作曲家としてそのキャリアをスタートさせた後、ヨーロッパへ渡る。 映画監督、作曲家、画家として活躍するアーティスト。 2022年/109分/フランス、ルクセンブルク、カナダ、オランダ合作 という製作背景もなんだかうなずける。 極楽映画大賞アニメ部門 ノミネート 2024年7月26日 公開