「めくらやなぎと眠る女」

アニメ映画『めくらやなぎと眠る女』公式サイト
http://www.eurospace.co.jp/BWSW/

僕はいわゆるハルキストの一人かな。
デビュー作の(1979年4月発表)『風の歌を聴け』
からほぼリアルタイムで村上作品は全作追いかけている。
本作は
80年代から30年間ぐらいの最も充実した(と僕は思う)時期に書かれた
短編集からの6作品をベースにしている。
「かえるくん、東京を救う」神の子どもたちはみな踊る:2000年
「バースデイ・ガール」バースデイ・ストーリーズ:2006年
「かいつぶり」カンガルー日和:1983年
「ねじまき鳥と火曜日の女たち」パン屋再襲撃:1986年
「UFOが釧路に降りる」神の子どもたちはみな踊る:2000年
「めくらやなぎと、眠る女」螢・納屋を焼く・その他の短編:1984年

僕自身その時々に村上の文章で読んでいるからこそ強く言いたいのだが
脚本を書くにあたりこうした発表された時期もテーマもまちまちもあるものを
良くここまでまとめ、再編成し、
さらに
このようなまとまった作品、映像化ができたものだと。
原作では阪神淡路地震が題材だったが
本作では東日本大震災に置き換えるなど
時間的な移行がされているだけでなく
主な登場キャラクターの一つ一つが丁寧に無理なくアレンジされている。
また、脚本だけでなくアニメ映像として
日本人の顔のつくり
日本の町のつくり
日本人のしぐさのつくり
多方面において日本人である僕たちには描き切れなかった
「日本、日本人」を描き切っている。

村上春樹はエッセイで
自分の著作過程を語っている。
まず、日本語で書き、それを英語に翻訳し
そして最後にまた日本語でにすると。
英語版、日本語版のどちらが完成ということではないようだ。
そういう意味で彼の作品がグローバルな支持を得ている要因の一つだろう。
更に
ずいぶん前に
駒場東大で開催された
村上春樹作品の世界の翻訳者が一堂に会するシンポジウムに行ったことを思いだした。
ここには日本語、英語だけでなく
スペイン語、フランス語
それこそ多種多様な翻訳者が集い
彼の作品のすばらしさ
それを自分が翻訳する事のすばらしさを語っていた。

本作はオリジナルの英語に加えて日本語吹き替え版も制作されている。
僕が見たのはオリジナル版で、
結果、先にオリジナル版を見ていてよかったと思う。
仮に後で日本語版を見たとしても。

資料には
監督のピエール・フォルデスは
アカデミー賞短編アニメーション部門にノミネートされセザール賞を受賞したハンガリー人の父ピーター・フォルデスと、イギリス人の母の間にアメリカで生まれる。
パリで育ちピアノと作曲を学び、ニューヨークで映画や広告音楽の作曲家としてそのキャリアをスタートさせた後、ヨーロッパへ渡る。
映画監督、作曲家、画家として活躍するアーティスト。

2022年/109分/フランス、ルクセンブルク、カナダ、オランダ合作
という製作背景もなんだかうなずける。

極楽映画大賞アニメ部門 ノミネート

2024年7月26日 公開

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