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極楽試写会

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新作映画の試写会の案内もオンラインでの試写が増え、 気軽に自分なりに選んだ作品の試写をしております、 極楽気分で。 そんな中、皆さんにも見てほしいなと思った作品を紹介したいなと
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2024年3月の記事一覧

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「プリシラ」

映画『プリシラ』公式サイト https://gaga.ne.jp/priscilla/ しっかりした映画。 実力も評価も高いソフィア・コッポラの最新作。 どう評してよいのか最初の言葉選びに慎重になった。 これはあくまでも僕個人の力量の問題かとは思うのですが ソフィア・コッポラとの最初の出会いが (これもまた評価はすごく高かった)「ロスト・イン・トランスレーション」。 ロスト・イン・トランスレーション : 作品情報 - 映画.com https://eiga.com/movie/1507/ だが、僕にはどうにもその面白さがよく分からなかった。 そして、今回満を持して臨んだ。 そして感想として第一に浮かんだ言葉がこれ。 父親フランシスの後姿を見て育ち 映画製作というスキルをそれこそとんでもないレベルで学んで自分のものとした彼女だからこそ その作りには寸分の隙も無いしっかりした作品に作り上げている それが本作なんだろう。 まぁ、理屈はともかく ストーリーはいたってシンプル。 プレスリーの妻になるプリシラ 14歳の可憐な少女プリシラがエルヴィスと出会い若き妻となり、来る別れを描く。 彼との重ねられる生活の中から その揺れる想いや心の変化を 僕たちにもまるでその目撃者のごとく体感させてくれる。 真のスーパースター、エルヴィス それを取り巻く状況に、通常こうした映画でありがちな(ある意味過剰な)表現描写が抑えられることにより 逆にこちら側への影響力が増すことをコッポラは狙ったんじゃないかな。 過剰な表現描写は抑えられていると書いたが 実はヴァレンティノ、シャネルをはじめ、プリシラを飾る、そのビューティー表現には 「やはり女性監督!」とうなずいちゃいましたね(昨今こういう表現はなんですが・・・)。 また 音楽だが コッポラの夫トーマス・マーズのポップロックバンドPhoenixが担当している。 作中では以外にもエルヴィスの曲はほとんど聞かれず エンディングではカントリーシンガーのドリー・パートンが1973年に発表した 「オールウェイズ・ラヴ・ユー」。 この曲をラストに使用したという監督の狙いは当たったと思う。 余談だが 一般的にはこの曲映画『ボディガード』の主題歌として ホイットニー・ヒューストンがカヴァーしたのがなじみ深いと思う、まっ。 ボディガード(1992) : 作品情報 - 映画.com https://eiga.com/movie/49405/ プリシラ役のケイリー・スピーニー ベネチア国際映画祭最優秀女優賞を受賞、ゴールデングローブ賞主演女優賞(ドラマ部門)にもノミネートさ 若い才能に期待。 そして エルヴィス役のジェイコブ・エルロディ これがまた何とも言えずに良いのですよ。 プレス資料には 【コッポラは、プリシラの相手役には、数えきれないほど映画やテレビ、文学で描かれてきたエルヴィス像からはみ出すことを厭わない役者を求めていた。 コッポラはこう指摘する。 「プリシラ目線のエルヴィスですから、彼の人物像は完全に彼女の話を元にしています」 「エルヴィスのプライベートな部分、ステージの上とは違う、他の誰も目にしたことのない側面です。 この物語には、彼のパフォーマンスシーンはあまりありません。 この役で重要なのは、プリシラとふたりで家にいる時の姿や、彼女が目にした傷つきやすさ、疑念、弱さです」】 この通りの役を見事に演じている!僕は好きだなぁ。。。 【ソフィア・コッポラ監督からのコメント】(プレス資料から) プリシラ・プレスリーの回想録を読み、彼女のグレースランドでの体験に心を動かされました。 私が表現したかったのは、エルヴィスの世界に飛びこみ、紆余曲折を経てやっと自身の人生を見つけたプリシラの心情です。 私はモノづくりを行う人間として、先入観ではなく、登場人物の目を通して世界を見せることに尽力しています。 アイデンティティや主体性、変容といったテーマには、常に関心を持ってきました。 この映画では、プリシラがいかにして今の彼女となったのか、そして彼女とその後の世代にとって、 女性であることがどのような意味を持つのかを紐解いていきます。 確かに、プリシラが置かれた環境は、とても壮大で一般人とはかけ離れたものです。 でもプリシラも多くの女性と同じように、色々な経験を積みながら大人になりました。 プリシラの人生は、類い稀であると同時に、私たちが深く共感できるものでもあります。 ということで 改めて 誠にしっかりした映画であります。 2024年4月12日 公開

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「COUNT ME IN 魂のリズム」

2024.3.15(金)公開『COUNT ME IN 魂のリズム』公式サイト https://countmein.jp/ すみません 100% 面白い 100% 理解できる 100% 同感  300% で、極楽映画大賞特別賞枠でノミネート 最初に何で謝ったかというと ・・・僕も実はドラマーの端くれだった、勿論プロじゃなかったけどね(この「端くれ」ってのが良いねぇ、)・・・ 冷静な目で観れなかったし、たぶん、そうじゃない人(ドラマーじゃない普通の人)には 彼らが語ることが、どこまで理解されるのか、どこまで理解されるのか、どこまで面白いのか が判断できないからなんだ。 内容はいたってシンプルで 生の本当の一流ドラマーたちが その魅力について語るだけ。それで十分すぎるんだ! 登場者は ロジャー・テイラー(クイーン) イアン・ペイス(ディープ・パープル) ニック・メイスン(ピンク・フロイド) スチュワート・コープランド(ポリス) ニック・“トッパー“・ヒードン(ザ・クラッシュ) テイラー・ホーキンス(フー・ファイターズ) クレム・バーク(ユーリズミックス/ブロンディ) ニコ・マクブレイン(アイアン・メイデン) ラット・スキャビーズ(ザ・ダムド) ボブ・ヘンリット(ザ・キンクス/アージェント) ジム・ケルトナー(トラヴェリング・ウィルベリーズ/エリック・クラプトン/ライ・クーダー) エミリー・ドーラン・デイヴィス(ザ・ダークネス/ブライアン・フェリー) ベン・サッチャー(ロイヤル・ブラッド) エイブ・ラボリエル・ジュニア(ポール・マッカートニー/スティング) ジェス・ボーウェン(ザ・サマー・セット) ドラムはバンドの錨 同感300%の85分 そして最後は4 人によるドラムSoloセッション ・・・・常に僕は思うんだけれど、良いドラムSoloは「歌っている」ということ、 歌うように叩くのではなく、ドラミングから自然にメロディーが聞こえてくるんだ・・・ そしてこのラストのセッションはその結晶と見れた。 2024年3月15日 公開 PS 見ていて気が付いた! 素晴らしいドラマーは皆 「口ドラム(口でドラミングを表現する)」ことがうまいんですよ。

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「ブルックリンでオペラを」

映画『ブルックリンでオペラを』公式サイト|2024年4月5日(金)公開 https://movies.shochiku.co.jp/BrooklynOpera/ ハイカルチャーなラブコメディー と、でもいうのでしょうか。 主演がアン・ハサウェイ、更にこの脚本にほれ込んで自身がプロデューサーも務める。 舞台はブルックリン、 スランプに落ち込むオペラ作曲家の夫が愛犬の散歩に出たことで始まる出会いと展開のストーリー。 ディズニー映画「101匹わんちゃん」の 舞台をロンドンからNYブルックリン、主要な役どころを売れない作曲家からのオペラ作曲家に変え 時間が現在になると、こういう物語に代わるんじゃないかな、とも、勝手に思えた。 物語は 2つの家族、夫婦 ・・・といっても、これがまた今風なのか、それぞれ離婚を経て今は違う伴侶のもとで、それぞれが連れた高校生の子供がおり、 かたや 学歴コンプレックスのつまらない法廷書記官の父、いまだに市民権を得られない移民の母 かたや アンが演じる、潔癖症気味で強くキリスト教を信じる精神科医の母、ピーター・ディンクレイジ演じるスランプに落ち込んでいるオペラ作曲家の父 そこにマリサ・トメイ演じるブルックリンの港を行きかうタグボートの船長 こうした途上人物が繰り出すラブコメディー。 そして このストーリーの軸になるのが、オペラ作曲家がスランプを脱する出会いと、それを題材にしたそれら作品が舞台上で演じられるのだが それが ハイカルチャーなラブコメディー、と表したゆえんであります。 船長を演じたマリサ・トメイ、さすが、法廷コメディ「いとこのビニー」 いとこのビニー : 作品情報 - 映画.com (eiga.com) https://eiga.com/movie/42455/ で第65回アカデミー助演女優賞を受賞した実力がここにも。 すでに名優といえるアン・ハサウェイは、プロデューサーも務めたからか、 ちょっと肩に力が入り過ぎてないかな、とも、勝手に思ったが、 それほどこの作品に力を注ぎ込んだのだろう、きっと。 監督のレベッカ・ミラー数多くの作品を送り出している監督とのことだが あの「セールスマンの死」他多くの名作で知られる劇作家アーサー・ミラーの娘という事はやはりお伝えしておきたい。 そうそう 音楽、というかエンディング音楽に 唐突にブルース・スプリングスティーンが登場するのがなんとも意外で、、、、 (Pとしてのアンが動いたんでは?などと邪推してしまった) ところで、いつものようについつい、 この機にブルックリンについて調べてみた。 名前の由来は1600年代から入植を始めたオランダ人が、母国の地名Breuckelen(ブルーケレン)という名前を付けたことから。 地域の特徴は かつてはハーレムやブロンクスと並ぶニューヨークのなかで治安が悪いとされるエリアとなっていた (僕がこの時期によくNYに行ってたんだが、確かにこのイメージが強く足を運ばなかった、古い話です) が 1990年代後半になるとギャラリーなどが続々とオープン、アートフェスティバルも開催されるようになり エンターテインメント産業の場ともなり、今は新しいカルチャーやトレンドを生み出す注目エリア。 最後に。 本作も最近のハリウッドに良く見受けられる、 いろいろな点で多様性の存在を取り込んでいるんだろうな、という姿勢は分かる。 本来のストーリーや展開に無理感を出すまでいかないように・・・。 2024年4月5日 公開

番外編:北極に行ってきた・・・「野性の叫び声」

写真:僕が今回撮ってきた極地の風景 「野性の叫び声」 野性の呼び声|映画/ブルーレイ・DVD・デジタル配信|20世紀スタジオ公式 前回ここで「私事だが・・・」と北極に行くことを記した。 で、目的を果たし先日帰国した。 その話を友人にしたら 今回の作品を観ることを勧めてくれた。 2020年公開の過去作品なので もちろんいつもの試写ではなくAmazon videoの配信で鑑賞。 コロナ禍の真っ最中の時期だから見逃した方も多いのでは、 良ければ皆さんも配信でご覧いただけますので

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「ゴッドランド/GODLAND」

https://www.godland-jp.com/ デンマークとアイスランドの映画。 北欧好きの僕としては それだけで魅かれてしまうの、 と書きつつ デンマークもアイスランドの映画も 今まで見たことがなかったので これが初体験、で、その体験は 十分すぎるほどの重さだった。 アイスランド は第二次世界大戦前まで 長い歴史の中で周辺国の植民地で 最後は北欧の王国デンマークに支配されていた。※ この地にデンマークから若き牧師である主人公が教会建設というミッションで 辺境の村に送られるところから物語は始まる。 過酷な自然を乗り越え目的地を目指すだけでなく 領主国デンマーク嫌いのガイドとの対立、 事はそう素直には進まない。 自然の猛威:素晴らしい自然 神を愛する立場:地域的、民族的な偏見 それを象徴するかの如くの言語の溝(デンマーク語とアイスランド語は全く違うとこの作品で知った)。 これらが入り交じり ストーリーとは一言で言い表せない多くの混沌、映像の世界をベースに そこに 「人間」という神秘を見事に表現した。 ・・・こうした内容が 一般的にポピュラリティーを得られるか難しいと思うが 観た後に心の中にドシンと重いものが残ることは確かだ・・・ と、 「何書いているの?意味わからなーーい??」 と批判されるのはわかるが それしか言いようがないんだ、 「見ればわかる」という禁句さえ浮かんでしまう、です。 そしてそして 製作陣が揺るがずに作る視点を定めた結果だろう、 監督・脚本はアイスランド生まれでデンマークで育った気鋭フリーヌル・パルマソン、 2022年・第75回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に出品されたほか、世界各地の映画祭で数々の賞を受賞した。 主演の牧師役にデンマーク系アメリカ人のエリオット・クロセット・ホブ 気難しいガイド役にアイスランド映画の名優イングバール・E・シーグルズソン ともかく 監督はじめ皆僕には初顔だった、で、皆素晴らしかった。 特にイングバール・E・シーグルズソンには惹かれましたな! ※調べてみた: 13世紀以降はノルウェー(1262年 - )およびデンマーク(1397年 - )の支配下に置かれる。 デンマーク王国は1550年にアイスランドにルター派を強制的に導入。 1918年にデンマーク国王主権下の立憲君主国、アイスランド王国として独立(同君連合)。 第二次世界大戦でデンマークがナチス・ドイツに占領(北欧侵攻)。 1944年6月17日に共和国として完全な独立を果たした。 PS 私事だが 近々、北極に行くので、 アイスランドよりさらに北の北極点直近のスバールバル諸島、 この作品の映像はまた格別の思いが浮かんだのだと思う。