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極楽試写会

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新作映画の試写会の案内もオンラインでの試写が増え、 気軽に自分なりに選んだ作品の試写をしております、 極楽気分で。 そんな中、皆さんにも見てほしいなと思った作品を紹介したいなと
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2023年10月の記事一覧

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「リアリティ/REALITY」

映画「リアリティ/REALITY」公式サイト https://transformer.co.jp/m/reality/index.html 心理スリラー、 2017年  第二のスノーデンと呼ばれた女性リアリティ・ウィナーが 国家反逆罪で捕らえられた実話。 2016年トランプが誕生したアメリカ大統領選、 その勝利にはロシアのハッカーによる介入があったという報告書を 当時関係機関に勤めていたリアリティがメディアにリークし<第2のスノーデン>として世界を驚愕された事件。 本作のポイントはその事実をなぞるドキュメンタリー的な映画ではない。 捜査当初の82分の長さの調査録音を再現させ それに沿ってというか、まさにそれを軸に映像をフィティングさせ完成させたところだ。 その展開はまさにFBI捜査官、容疑者を巡る「心理スリラー」として成立している。 監督・脚本の ティナ・サッターは 演劇・映画の脚本家・演出家であり数多くの短編作品や映像作品を米国内外で上演・上映し 本作『リアリティ/REALITY』が長編映画のデビュー。 主演の シドニー・スウィーニー(リアリティ・ウィナー)は 1997年12月12日ワシントン州生まれ。 2019年にはクエンティン・タランティーノ監督作『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』に出演。同年、HBOとA24がタッグを組み全米で話題となったドラマ「ユーフォリア/EUPHORIA」のメインキャストに抜擢され、リミテッドシリーズ「ホワイト・ロータス/諸事情だらけのリゾートホテル」(21)と2作品でエミー賞の助演女優賞にノミネートされた 若手最注目の俳優。 場面展開はほぼ無く、 1室内で繰り広げられる捜査官とのやり取りだけ。 主役のリアリティが82分というわずかな時間の中でその容疑を未から実に変容させていく様は見事。 本年度、極楽試写会 主演女優賞ノミネート (年末公開を控えて力作が多く、各部門ノミネート作が目目白押しです) 2023年11月18日 公開

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「父は憶えている」

映画『父は憶えている』公式サイト https://www.bitters.co.jp/oboeteiru/ キルギスの映画。 おっと!来ましたよ、来ましたよ。 キルギスを代表する映画作家アクタン・アリム・クバトの最新作であり主演も演じる。 主人公はロシアに出稼ぎに行っている間に記憶を失い、23年ぶりに故郷のキルギスの村に戻ってきた。 そこで繰り広げられる男とその家族を描くドラマ。 人、生活、金銭等々 どの世界でもありうる大小の事柄や問題を さりげなく表した何とも言えない人間劇がそこにある。 アクタン・アリム・クバトというと もう10数年前に見た 「明りを灯す人」 明りを灯す人の予告編・動画「予告編」 - 映画.com https://eiga.com/movie/55196/video/ がすぐに浮かぶ。 本作と同じく彼が監督・主演の作品で これも期待通り 静かな生活の中に繰り広げられる「人」のもつ「何か」 神髄をそこはかとなく表した作品。お勧めです。 映画も監督に関しても 資料が少なく 周辺情報を記すことはできないので キルギスに関して調べたことを少し。 旧ソビエト連邦の構成国であり、連邦の崩壊に伴い独立 内陸国で、カザフスタン、中華人民共和国、タジキスタン、ウズベキスタンと国境を接する 人口600万人、90%はイスラム教徒 人間開発指数120位の発展途上国であり、中央アジアでは2番目に貧しい国 これが映画です、と言いたい作品。 極楽試写会 外国映画賞 ノミネート作品 2023年12月1日 公開

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「理想郷」

映画『理想郷』公式サイト https://unpfilm.com/risokyo/ 観る側に 「考えさせ」「目を見開かせ」そして「観るという結果を満足させる」。 環境問題、貧困、人間関係、人種等々、多種にわたる問題を提示し、 「考えさせ」「目を見開かせ」 そこに映画としての物語性、展開、緊張感を持たせ続け 「観るという結果を満足させる」 作品といえる。 舞台はスペイン北西部の地域ガリシア、この過疎の村で起こった 事実を基にしている。 この地の自然に魅入られて移住してきた元教師の物静かなフランス人夫婦。 そこには、過疎解消のため、風力発電の風車建設から得られる補助金を得て 自然破壊に目をつぶる選択を迫る地元民と 対する自然保護をうたう、ある意味外物の夫婦との対立が。 特に貧しい牧夫故に婚姻相手も現れない教養の無い粗野な中老年の兄弟からの危険を伴う嫌がらせが 最悪の事態を招いてしまう。 僕もコロナ前にドイツの田舎を旅した時、 その時期は特に世の中は自然再生エネルギーが万能の救世主のように言われていた時期だが 丘陵に点々と続く大型風車の風景に違和感を感じたことがある。 同時に日本でも 大好きな八ヶ岳の草原で、広く山林を潰しての太陽光パネル設置が進んでいたのを目にしたときには 憤慨すら感じた思いがある。 (・・・現在はこれらの持つ問題点が明らかにされ、ある段階での規制がかかっているフェーズには入ってはいるが・・・) もちろん、このような僕の感想は一過性の人間が抱くものであり 作品の中にあるような そこに先祖代々から暮らす人々にとっては目の前にある貧困、差別問題の方が 現実の課題であるという事も理解はできる。 ・・・だからと言って無秩序に自然破壊してよい、ましてや犯罪を犯してよいということではない・・・。 ともかく 本作は私たちに このように問題を提起させ 物語の中に引き込ませてしまう 力を持っている。 スペインで2022年に公開された独立映画の興行収入1位 第48回セザール賞で最優秀外国映画賞 世界で56もの賞を獲得しているのも納得できる。 マニアックな点だが ところどころのシーンで(実は)行われているカメラワークには 唸る所があるので この点も少し気にしながら観ることも、おすすめかな。 極楽映画大賞:ノミネート 2023年11月3日 公開

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「SISU/シス 不死身の男」

映画『SISU/シス 不死身の男』公式サイト https://happinet-phantom.com/sisu/ 地政学的に、第二次世界大戦下のフィンランド・・・ ナチスに進行されソ連に凌駕されたこの地の歴史を忘れていたんですね。 と、、、そうしたことがどうこうという事実など吹っ飛んでいく 凄いバイオレンス。 普段この手の物は見ないんですが フィンランド好きという僕でして、観たらまぁ!? ともかくもうこのオヤジ凄すぎるんですが(だって本当に何されても死なないんだから)。 でも単にバンバンやっているのではなく たとえば マカロニウエスタンのクリント・イーストウッド演じる主役の哀愁と怨念 キル・ビルの切れの良さ等々 映像作品としてなかなかのものであります。 因みに主演の 伝説の一人殺戮部隊 アアタミ・コルピを演じる ヨルマ・トンミラは1959年生まれ(僕より1年若い!) ロシア・フィルムフェスティバルで最優秀男優賞を受賞し 母国フィンランドでは実力派の名が高い。 監督/脚本の ヤルマリ・ヘランダーは 同じくフィンランドでCM制作やTVドラマなどで活躍する1976年生まれ。 脂がのっている。 観終わって気が付いたけれど 主役は一言もセリフを発していなかった。 極楽映画大賞 特別賞 ノミネート 2023年10月27日 公開