初期設定を変更して生きやすくなった話

頭では分かっているけどなかなか行動に移せないことが急にカチッとはまって行動できるようになる経験があった。

ここ5年くらい自己理解に努めていた。例えばAボタンを押したら右手が上がるとか、Bボタンを押したらジャンプするとか、こういう環境に行ったらダメージを受けるとか、回復するとか私の身体と心の特性、性質はどういうものなのだろうかという実験を繰り返していた。

そこで分かった大きなことは、私はネガティブな人間でそれによって自己否定を繰り返し自分を傷つけてしまうということだった。

「私はダメだ」
「私が全て間違っている」
「私なんて存在しない方がいい」

このような自己否定を本気で信じていたのでとても生きづらかった。生きにくかった。

そんな自分を変えようと、ネットに転がっている様々なアドバイスを試してみた。考えすぎない、前向きに考える、ポジティブな発言をする、ネガティブな思考に影響されない、どれも正論なのかもしれないが、それができたらこんなに苦労していないよという気分だった。

その時にニーバーの祈りという考え方に出会った。

神よ、私たちに、
変えられないものを受け入れる心の平穏を与えて下さい。
変えることのできるものを変える勇気を与えて下さい。
変えることのできるものとできないものを見分ける賢さを与えて下さい。

ニーバーの祈り

これこそが私が望む理想の姿だと直感的に思った。この言葉を身体に染み込ませるために何度も繰り返し読み上げた。しかし、簡単に上手くはいかなかった。やっぱりネガティブな思考には振り回されて自己否定を繰り返してしまっていた。

こんな時は哲学者にアドバイスをもらおうと考えて『語録要録』や『自省録』を読んだ。自分がコントロールできないことは手放すという考えや、私たちが生きているのは現在のその一点のみであるのでそのような短い人生の中では必要なことのみに集中するのがよいという教えは頭では理解できたが、それでも長期的に安定して行動に移すことはできなかった。

このような経験を繰り返した結果、これが私だ、私はこういう人間なのでネガティブ思考によって自己否定を繰り返すことは変えられないと思っていた。

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隔週の楽しみにしている『ふらりとこたつーの聴いてよラジオ』を聴いていた。

この回は「大事にしている考え方」というテーマについて話していた。私やこたつーさんとは違って比較的ポジティブ思考のふらりさんの考え方がどのような仕組みになっているか語ってくれることになっていたのでとても楽しみにしていた。

その中でふらりさんが、

「好きな考え方を選べる」
「好きな考え方を選び続けたら、その考え方がクセになっていく」

と話していた。そのときに私の頭の中でカチッとラストピースがハマった音がした。考え方って選べるんだということが私の中ではとても大きかった。

私の中ではふらりさんの「好きな考え方を選べる」という言葉が今の私に深く刺さった。ふらりさんは元々こう考えるようになったわけではないと話していたので、おそらくふらりさんはネガティブな自分ではなくてポジティブな自分を信じているのではないかと考えた。

この時こそが私を変えるチャンスだと思ったので、私の取扱説明書を読み返してみるとどうやら私は「ネガティブな時の私を信じる」という初期設定になっているようだった。

初期設定を変えてふらりさんのようにポジティブな考えをインストールすれば私でさえもこの考え方を使うことができるのではないかと考えた。

初期設定とは製品などにあらかじめ組み込まれている基本的な機能や条件であると仮定すると、初期設定は絶対的なものではなく後から変更可能なものだということが分かる。

「ネガティブな私を信じる」という考えが初期設定ならそれは変えられるものなのではないかと考えた。

そこで「ポジティブな私を信じる」という初期設定に変更してみた。とりあえず試してみることにした。

「私はダメだ」という思考が浮かんだときに「今日はあなたのことを信じません」と言えるようになった。

希死念慮に襲われたときに、ネガティブの渦中にいても本当は私は死にたいと思っているわけではないと考えることができるようになった。

初期設定を変えてからかなり楽になった。無理やりポジティブ思考に変換するわけではなく、とりあえずネガティブな自己否定を信じないという選択をするだけで心がかなり軽くなった。

成功体験を積んだ私はその他の初期設定も変更してみることにした。

「自分の欲求よりも相手のやりたいことを優先する」

→「自分の欲求も大切に叶えてあげる」

このように初期設定を書き換えることで、小さな欲求を満たしてあげられるようになった。

観たい映画があったときに観に行ってみる。

食べたいと思った料理を食べに行く。

会ってみたい人に会いに行く。

話してみたい人にお話ししませんかと提案する。

本当に小さな欲求かもしれないが、心に浮かんだ欲求を自分の意志と身体によって叶えていくという経験を積み重ねていくと、私にもできることがあるんだと小さな自信を育てていくことができた。

ニーバーの祈りや『語録要録』『自省録』の学びもスーッと頭に入ってくるようになった。自分がコントロールできることに集中し、そうでないものは手放すことが段々とできるようになってきた。

初期設定を変えるだけでこんなに大きく自分の行動や考えを変えることができるんだと実感している。

ポジティブな時にポジティブ思考を信じることは比較的簡単なのだが、ネガティブな時にも効果を発揮した「ポジティブな私を信じる」という初期設定は今後も良い方向に私を導いてくれるだろう。

私はポジティブな感情にもネガティブな感情にもなるし、ポジティブな思考や感情が絶対善で、ネガティブな思考や感情が絶対悪ではないので前者を全肯定して後者を全否定するのではなく、必要な時に必要な考え方を選べることが大切なのではないかと思う。


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誰のどの言葉がどのように刺さるかは分からない。同じ言葉でも出会うタイミングが違えば全く刺さらないこともある。だからこそ私が出会った「考え方を選べる」という言葉が誰かの心にいつかのタイミングで刺さって救ってくれますように。初期設定を変更することで過度な自己否定をして自分を傷つける人が減りますように。