
【書籍】ネット右翼になった父
今日は,『ネット右翼になった父』(鈴木大介著, 講談社, 2023年)について紹介したいと思います。以前から気になっていた本ですが,やっと読む機会を得ました。
記事
著者のネット上の記事『亡き父は晩年なぜ「ネット右翼」になってしまったのか』うぃ,当時読んだ記憶があります。亡くなった父親の遺品整理としてパソコンの中をのぞくと,ブックマークに「嫌韓嫌中のコンテンツ」,「嫌韓」と書かれたExcelファイルには,YouTube動画のブックマークがあったという話から始まるコラムです。
本書も,このコラムが引用されており,ここからネット右翼にはまっていく姿が描かれるのだろう……と予想して読み進めることになります。
ケース記録
この本の中で描かれるのは,著者の亡くなった父親の詳細な人となりの記録です。一種の個性記述的な研究であり,興味深い記録となっています。父親の言動や記録をたどり,周囲の人々にもインタビューし,本人の人となりを探っていく試みは,ひとつの研究として成立するようにも思えました。
そして,著者は1973年生まれで私(1972年生まれ)と同世代,私の父も戦中(太平洋戦争終盤)生まれです。あまりに自分そして自分の父親と重なるところが多く,自分に重ねながら読んでいき,最後は著者の真摯な姿勢に感動してしまったというのが正直なところです。
生きざま
自分の父親はそこまで「昭和の父親」というわけでもなく,むしろ母親の方が家の中では強いような関係性でした。しかし,この本の中で描かれる,戦中戦後世代とその子どもの世代(第二次ベビーブーマー)との関係性は,非常に再現性が高いのかもしれません。このあたりの世代が,いちばん価値観のズレが大きいのかもしれませんし,自分も父親とどんか会話を交わすのか,と言われると困ってしまうのが正直なところです。
生まれてからいちばん価値観が転換した世代であるかもしれないのです。そんな世代が世の中の変化に戸惑い(うまく合わせられず?),ネット上の言説に親近感を持って接する姿というのはよくあるのかもしれないと,あれこれ思いながら読んでいきました。
さて
さて,「ネット右翼になった父」というタイトルは少々ミスリードで,著者としては実際にはネット右翼として扱ってしまった自分を内省していくところに主眼があるように思います。
読み終わった時,私たち第2次ベビーブーマーが一度は読んでおくべき本かもしれない,と思いました。世代,家族,ネットの言説など,多くのことを考えさせられます。
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