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スタンフォード大学の心理学の躍進
今日は少し趣向を変えて,とある本に描かれていたスタンフォード大学の様子を見ていきたいと思います。
ホットハンド
書かれていたのはこちらの本,ベン・コーエン著『科学は「ツキ」を証明できるか:「ホットハンド」をめぐる大論争』です。バスケやテニスなどなんでもいいのですが,続けて点が入ると「流れが向いてきましたね」と表現することがあります。この「流れ」が本当に起きるのかどうかは,心理学のなかでも研究されてきたことなのですよね。
ホットハンドの誤謬
ホットハンドについては,Wikipediaにも記事が掲載されています。「一見ランダムな事象で成功を経験した人は、追加の試行においてさらに成功する可能性が高いと信じてしまうという誤謬」と説明されていますね。
というわけで,この本にも心理学者がたくさん登場します。そして,Wikipediaにも登場するトヴェルスキーやギロビッチは,スタンフォード大学の研究者なのです(トヴェルスキーはスタンフォード大学に赴任,ギロビッチはスタンフォード大学出身)。
スタンフォード
スタンフォード大学は1970年代,全米一の心理学部にを擁する大学になっていきます。その背景には,1950年代から60年代の大学の改革があったそうです。
スタンフォードは1950年代から60年代にかけて,「厳選された分野を扱う,厳選された学部を」という方針を掲げた。
この方針の背後には,当時の副学長だったフレデリック・ターマンという人物がありました。彼は工学が専門なのですが,心理学を勉強していて「ターマン」という名前を聞けば,ある人物が思い浮かぶはずです。
ターマン
ターマンと言えば,ルイス・ターマンです。スタンフォード・ビネー検査という知能検査の開発者ですね。検査名に「スタンフォード」とついていることからも,イメージができます。
そして,フレデリック・ターマンの父はルイス・ターマンなのです。さらに,フレデリック・ターマンの妻は,ルイス・ターマンが指導した心理学の大学院生だったそうです。ある面では利益誘導のようにも思えてしまうことですが……。
彼自身は工学が専門だが,妻が同大学心理学部の大学院生だった。実は彼女を指導したのが,有名な心理学者であるターマンの父だった。
卓越した尖塔
さて,当時のスタンフォード大学は,特定の学問分野に賭けて資源を集中させる戦略を取ろうとしていました。ターマンはこの戦略を「卓越した尖塔」と表現しています。心理学もそのひとつだったのですが,他には,航空工学,数理暗号学,宇宙物理学,核兵器や化学兵器の研究も含まれていたようです。
ターマンの表現を借りれば「卓越した尖塔」として,スタンフォード大学は名声を確立することになる。特定の学問分野に賭け,そこに資源を集中させるべきだというのがターマンの考えだった。その少数の分野を正しく選定できれば,大学全体の地位を向上させることができる。彼が選んだ「卓越した尖塔」のうち,分かりやすいのは,航空工学,数理暗号学,宇宙物理学,そして核兵器や化学兵器の研究といった,ハードサイエンスの分野だった。第二次世界大戦の惨状から復興し,冷戦に備える時期だったため,米政府は,軍産複合体に貢献する研究者に対して喜んで資金を投じた。国防に携わる人々に,大金がつぎ込まれたのだ。
心理学部
このようにして資金が投入されたスタンフォード大学心理学部ですが,現在でもスタンフォード大学の心理学部は世界の大学ランキングでトップを走っています。
この背景には,1950年代から60年代にかけての資金投入があったのですね。さらにその後ろにはターマンがいたというのが,歴史的にとても興味深い出来事です。
そんな状況下で,心理学部は最も「卓越した尖塔」らしくない学部だった。だが,投資に見合うだけの素晴らしい結果をもたらした。ターマンが副学長に就任した直後の調査では,心理学部は全米の大学院の中で第五位だった。しかし七年後に,米国教育協議会が同じ調査を行うと,同学部は一位に輝いた。ギロビッチが大学院に入学した1970年代後半には,スタンフォード大学心理学部は宇宙の中心のような存在になっていた。心理学をリードする重要人物が一つの建物に集結していたので,食堂で出されるフィッシュタコスが傷んでいただけでも,この学問の発展が数日止まるほどだった。以前は学科ごとに棟が分かれており,社会心理学はあちら,認知心理学はこちら,発達心理学はまた別というように,キャンパスのあちこちに点在していた。だが,心理学部が同じ建物に移転するのと同時に,人も一カ所に集まることになった。これ以上ない,最高のタイミングだった。来るべき心理学の革命によって,細分化していた心理学の各領域が結び付くことになるが,それを初めて実現させたのがスタンフォードだった。「わたしたち自身が革命そのものでした」と,同大学の心理学者リー・ロスは言う。
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