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職場いじめの3つのパターン
職場でのいじめは,昔も今も変わらずよく見られるものです。意外と,医療系の職場や介護系の職場でも,ひどいいじめが報告されるケースがあります。
大人のいじめ
今回の記事は,『大人のいじめ』(講談社,坂倉昇平著)の内容から,一節を紹介したいと思います。この本では職場のいじめについて,いくつかの詳細な事例から考察しています。
パターン
職場のいじめは,おおきく3つのパターンに分けることができるそうです。これらは「どれかのパターン」をとるようなものではなく,重複して生じることもあるそうです。これら3つを合わせて,著者は「経営服従型いじめ」と呼んでいます。
職場ストレス発散型
第1のパターンは,「職場ストレス発散型」です。
職場の中で辛い出来事を経験したときに,ストレスの発散を会社そのものや経営者に向けるのではなく,より立場の弱い職場の同僚や部下に向けるというパターンです。会社側からすれば,労働者から向けられる不満が自分自身に向けられず,不満の矛先が別に向かうという効果が得られることにつながります。
心神喪失型
第2のパターンは「心神喪失型」です。
長時間労働や無理な労働内容は,心身を疲弊させます。そこにいじめが加わると,思考停止状態に陥ってしまう可能性が高まります。すると,労働者は現状に疑問を抱かなくなり,黙々と過酷な労働に従事するようになってしまう可能性が出てきます。
規律型
第3のパターンは,「規律型」です。このパターンは,ワンマン経営者のもとで生じやすいようにイメージするかもしれませんが,必ずしもそうではないようです。
会社の方針や経営方針に従順ではないと見なされた労働者が,いじめてもよい対象者,人として扱わなくても良い対象者として見なされてしまうパターンです。すると,激しいいじめの標的となりやすくなります。
「矯正」「排除」「反面教師化」といった扱いによって,他の労働者たちはいじめられている労働者が「指導を受けており」「正規のルートから排除されており」「参考にすべきではない存在」であると見なすようになっていきます。すると,あたかも自分自身は会社にとって役立つ存在であるので,この差別的な扱いに加担することが正当な行為だと考えるようになっていくというわけです。
背景要因
職場のいじめは日本だけで見られるものではないと思います。どこの国の職場でも,いじめが発生する可能性はあります。
しかし日本特有の働き方が,職場のいじめを生み出しているのではないかという指摘も,本書の中で行われています。
一方,日本型雇用の正社員においては,この職務という基準が存在しない。賃金の決め方も昇進も,会社任せとなっていた。まず,従事する職務じたいが限定されていない。社内を頻繁に異動させられ,様々な職務を柔軟にこなしながら,徐々に課長や部長へと出世の階段を昇ることになる。
さらに,昇給や昇格において,欧米型の労務管理ではありえない全正社員への「査定」が導入された。しかも,日本の正社員に対する査定は,職務という客観的な基準ではなく,個人の「能力」によって決められた。その能力とは,「企業への貢献度」である。
サービス残業や休日出勤を積極的に引き受け,有給休暇も申請しない。遠距離への突然の転勤も,慣れない業務への転換も受け入れて,家族ぐるみの引っ越しや単身赴任,理不尽な業務にも耐える,そうした「態度」や「人格」が評価された。このため,日本型雇用の正社員は,家事や育児を負担する必要のない(主婦である配偶者に押し付けることのできる)「男性」であることが大前提であった。
どこまで昇給・昇格するかは,個々の労働者の貢献度によって決まる。入社当初は同期が横並びでスタートするが,徐々に差が開き始める。自身の余暇や健康,家庭の事情など,あらゆる価値観を企業に従属させ,労働者たちは出世競争に明け暮れた。
その過程で労働者が内面化するのは,その職業の労働者としてではなく,その会社の「社員」としてのアイデンティティである。その「見返り」として,長期雇用や年功賃金が保障された。こうした環境の中で,「従属」と「競争」は,自分が生きるため,配偶者を養うため,子どもを育てるための,唯一の選択肢であると考えられたのだ。
その結果,日本の労働者は世界でも突出して,会社の利益に強くとらわれ,どのような命令にも従うようになってしまった。そして,社内の同僚とも競わされ「分断」させられていった。経営の論理に歯止めをかけ,職場いじめを押しとどめる力を生み出す素地は,あらかじめ失われていたということだ。
そして,いまや「見返り」が保証されなくなったにもかかわらず,わずかな「幻想」にすがって,日本の労働者の多くは今日に至るまで,「従属」から「対抗」への転換ができないままでいるのである。
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