性格とバーンアウトの全体と個別の関係
燃え尽き症候群(バーンアウト)は,主に仕事上のストレスに関連する現象です。するべき課題に取り組むまたは完了するための労力を費やすことができなくなってしまった状態のことを指します。
HEXACO
1990年代にビッグ・ファイブ・パーソナリティが広く知られるようになった一方で,21世紀に入ったところで注目を集めてきた枠組みのひとつがHEXACOモデルです。正直さー謙虚さ(Honesty-Humility),情動性(Emotionality),外向性(eXtraversion),協調性(Agreeableness),勤勉性(Conscientiousness),開放性(Openness to Experience)の頭文字をとってHEXACOと呼ばれています。
これら6つはドメインと呼ばれており,その下位の次元はファセットと呼ばれます。
ファセット
HEXACOモデルのファセットは,測定するツールによっても異なりますが,次のような内容で構成されます。
◎正直さー謙虚さ
・誠実さ:対人関係において誠実であろうとする傾向
・公平さ:個人的利益のために他者からの搾取を避けようとする傾向
・強欲さの回避:富や地位に対する無関心
・謙虚さ:控えめであろうとする傾向
◎情緒性
・恐怖心:恐れを抱く傾向
・不安:心配する傾向
・依存性:苦痛を感じたときに助けを求める行動
・感傷性:他者に対する感情的な親近感
◎外向性
・社会的自尊心:自分自身を肯定的に評価する傾向
・社会的大胆さ:社会的相互作用において率先して行動する傾向
・社交性:社会的相互作用を楽しむ傾向
・快活さ:エネルギッシュで熱狂的である傾向
◎協調性
・寛容性:自分を搾取した他人を信頼しようとする意欲
・優しさ:人が他人を評価する際に温和である傾向
・柔軟性:妥協して論争をしない傾向
・忍耐力:他人に対して腹を立てない傾向
◎勤勉性
・組織化:自分の持ち物を整理整頓し,計画を立てる傾向
・勤勉さ:目標を設定して懸命に働く傾向
・完全主義:間違いを避けようとする傾向
・慎重さ:衝動に身を任せない傾向
◎開放性
・美的鑑賞:芸術や自然界に興味を持ち,感動する傾向
・探究心:さまざまな知識に関心を向ける傾向
・創造性:斬新な角度から問題に取り組む傾向
・型破りさ:標準的でない態度や考えを持つ傾向
バーンアウトとHEXACO
バーンアウトとHEXACOモデルとの間には,どのような関係がみられるのでしょうか。これまでにもいくつかの研究が行われているようです。正直さー謙虚さ,外向性,協調性,勤勉性はバーンアウトとマイナスの関連,情緒性はプラスの関連を示すというのがおおよその結果のようです。そして,開放性については,バーンアウトとあまり関連を示さないようです。
しかし,バーンアウトは内容も複数のものが含まれており,HEXACOモデルもファセットをもちます。これらの関係を詳細に検討すると,どうなるのでしょうか。
マスキングとキャンセレーション
ファセットとドメインを考えると,いくつかの現象を想定することができます。
◎マスキング効果:あるファセットと別のファセットが逆方向の関連を示すことで,ドメイン全体と当該変数との関連が小さくなる。
◎キャンセレーション効果:あるファセットと別のファセットが逆方向の関連を示すことで関連を打ち消し合い,ドメイン全体と当該変数との関連が完全に失われてしまう。
マスキング効果が生じる条件についても検討されているそうです。
◎ドメインと基準との間に有意な相関がある
◎ファセットと基準との相関の少なくとも1つが,同じドメイン内の別のファセットと基準との間の相関よりも有意に強い
◎ファセットと基準の相関の少なくとも1つが,ドメインと基準との相関と有意に異なる
さらにこれらに加えて,ドメインと基準との間の相関が見られない場合に,キャンセレーション効果だとされます。
実際の検討
では,実際にマスキング効果やキャンセレーション効果を加味した上で,HEXACOモデルとバーンアウトとの関連を検討するとどうなるのでしょうか。こちらの論文を見てみましょう(Masking and cancelation effects of HEXACO domains and facets in relation to work- and study-related burnout)。
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