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イギリスの心理学者たちの研究業績を評価する

割引あり

研究者の業績を判断するための指標には,複数のものがあります。心理学を専門とする研究者の業績評価は年々厳しくなっていて,10年前,20年前と同じような研究業績では就職することが難しい印象もあるくらいです。



業績評価指標

研究者の研究業績を評価する指標には,どのようなものがあるのでしょうか。

◎出版実績:論文や書籍の出版数,また内容。
◎被引用数:出版物が他の論文で何回引用されたか,また平均して1出版物あたり何回引用されたか。
◎インパクト指標:h指数(h-index: h本の論文がそれぞれ少なくともh回引用されているという指標),i10指数(10回以上引用された論文の数)など。
◎インパクトファクター:論文を掲載したジャーナルのインパクトファクター(IF)。
◎研究資金獲得実績:科学研究費補助金など外部から獲得した研究資金の合計。
◎特許数:取得した特許の数。
◎学会発表:特に国際会議での発表や口頭発表,招待講演などが評価されがち。

などなどありますが,これは研究分野,研究領域,研究テーマによって重視されるポイントも違っていて,一律に分野を超えて研究者を比較することができるわけではありませんので要注意です。論文をどんどん出版することができる研究分野もあれば,研究に時間がかかり,年に1本,数年に1本の論文を出版するくらいのペースが当然だという研究分野もあります。雑誌のIFも,研究者の人数が多く研究サイクルが短い研究分野ほど高くなる傾向があります。

しかし世界中で,これらの数値は,大学をはじめとする高等教育の評価,投資,政策に利用されます。評価する数字を示してしまうと,多くの人々がその数字に引っ張られて判断していくようになってしまうものです。

SCImago Journal Rank(SJR)

学術ジャーナルの影響力を評価する指標に,SCImago Journal Rank(SJR)というものがあります。Scopusという学術データベースに基づいて算出される値で,どの雑誌に引用されているのかを考慮し,分野間の偏りを補正し,過去3年間の引用データに基づくそうです。ある学術雑誌が別の学術雑誌に与える影響値とされます。SJRが高い雑誌には,高い水準の論文が掲載される傾向があると言われます。

今回紹介する論文では,この値が検討に用いられています。

イギリスの心理学者

今回紹介する研究の目的は,イギリスの大学の中で,心理学者の研究業績を先行研究で行われたオーストラリアの研究者の指標と比較して,さらに学部学科,大学,職位などとの関連を検討することです。このような検討は,研究者にとっては自身のキャリアを考える上で参考になりそうです(私自身はもうよいのですが……)。

こちらの論文を見てみましょう(Research performance of academic psychologists in the United Kingdom)。

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