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悪い性格をもつ人の嘘は上手いのか

極端な性格の人はウソをつくのが上手いのではないか,という意見はありそうです。こう思ってしまう背景には,普通の人はあまりウソをつかずに正直に生きているものだという考え方もありそうです。

ウソとは

ここで注意しなければならないのは,何を「ウソ」だとみなしているかが人によって意外と違っていて,ズレていることがあるということです。

辞書を見ると,嘘の項目には「事実でないこと」と書かれていて,それから「人をだますための事実とは違う言葉」とも書かれています。人をだますという意図的な目的がある場合はウソの狭い意味で,より広くは事実ではないこと全般をウソという場合もあるということです。

意図はあるのか

人をだます意図があるかどうかというのは,なかなか厄介な問題だと思うのです。事実とは異なることを言っても「人々をだますつもりはない」と言えばそれはウソではなくなるのか,という問題です。

たとえば,自分の立場を守るために事実とは異なる発言をすることはウソとは言わないのでしょうか。それも「だますつもりはない」と言えてしまうのではないでしょうか。そう考えると,次に「人をだます」とはどういう意味なのかが気になってきますね。

「だます」には,「うそを言って本当でないことを本当であると思い込ませる」と書かれていました。ん......?

政治家のウソ

政治家がつくウソについても話題になることがあります。他の人に対して共感性が欠け,自分のことばかり考えるような政治家はウソばかりついているのではないか,という考え方です。

先日も,政治家のウソについてというわけではないのですが次のような記事を目にした。「安倍首相は自己愛型か」という記事です。

安倍首相の発言には,他の人に対する共感性が見られなかったり,自分の非を絶対に認めようとしなかったり,典型的な自己愛性パーソナリティの特徴が反映しているという内容です。

そしてプライドが高く負けず嫌いなので,自分が言ったことの内容に矛盾があっても反論が先に出てきてしまうという分析です。

どうでしょう。ウソをつくことにつながりそうではありませんか?

ウソを見破るのは

そもそも,基本的に私たちは普段の生活の中で上手くウソを見破ることは苦手です。それはこれまでの研究でも繰り返し報告されています。

どうしてウソを見破るのが苦手なのかというと,普段の生活の中で他人のウソを判断して,それが正しいか正しくないかの確認をするような場面がほとんどないからです。

友達と会話をしていて「今のはウソ」「今のは本当」とひとつひとつ指摘して「正解」「ハズレ」というフィードバックをもらうようなことを日々繰り返すことはありませんよね。そんなことをしていたら,会話がギクシャクしそうです。だって,何気なくしている話の内容も,どこかで本当のことではないことや誇張や省略が紛れ込むものだからです。

ダークな性格

先の記事に書かれている自己愛性パーソナリティは,ダーク・トライアドと呼ばれるダークな性格特性のひとつとされるものです。自己愛の他には,サイコパシーとマキャベリアニズムがダーク・トライアドに含まれています。

自己愛は自分が好きで他の人を気にしない,サイコパシーは冷淡で罪悪感やかわいそうと思う気持ちに欠ける,マキャベリアニズムは自分が望むように他の人を操作しようとする傾向です。これらは周りの人たちをあまり気にかけず迷惑をかけやすい共通点をもっています。

ダークな性格とウソ

このようなダークな性格とウソの関連を検討した論文があります(Good Liars Are Neither ‘Dark’ Nor Self-Deceptive)。特に,うまくウソをつくことができるのかや,ウソをうまく見破ることができるのかというところに注目した研究になっています。


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