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心理学者のh指数と男女差

「h指数(h-index)」という数値を知っているでしょうか。これは,研究者個人が発表した論文の量と,それぞれの論文がどれくらい他の論文で引用されているのかを両方考慮した数値で,学術的なインパクトを数値化しようとした指標のひとつです。


h指数

ある研究者のh指数は,それぞれ少なくともh回引用された論文の数を指しており,それ以外の論文の引用回数がh回以下であることを示しています。たとえばh指数が「10」である研究者は,「10回以上引用された論文を10本」持っていて,それ以外の論文はすべて10回を下回る引用回数だったということを指します。もしもこの研究者の被引用回数が上昇して,11回以上引用された論文が11本になれば,h指数も「11」になるということです。

もしも2名の研究者がいてともに10本の論文を公刊していたとします。研究者Aは10本の論文がすべて5回引用されていて,研究者Bは1本だけ10回引用され,残りの9本はすべて0回の引用だとします。すると,Aのh指数は「5」,Bのh指数は「1」となります。出版した論文がのなかで多くの論文が多めに引用されていくと,h指数も上昇していきます。ひとつの論文だけが有名になる「一発屋」はh指数が低めに出てしまうというわけですね。

h指数の欠点

完璧な指標など存在しません。どのような指標にも,必ず欠点があります。では,h指数にはどのような欠点があるのでしょうか。

たとえば,これは研究に関連するどの指標にも言えることですが,引用される頻度が高い研究のフィールドで研究活動を行う研究者のh指数は高めに出ます。自分がどのフィールドで研究を行っているか,他にどれくらい研究者がいるかで数値が大きく変わってしまうのです。他の指標と同様に,研究者を数値で評価するときにはは「ある一定の分野内」でしか行うことが難しいということを理解しておく必要があります。

また,集中した研究分野の引用回数が非常に多い研究者よりも,まんべんなくそこそこ引用されるような研究を行う研究者のほうが高いh指数を示すことがあります。加えて,引用のパターンがずいぶん異なっている研究者でも,同じh指数を示すかもしれません。あとは,ひとりで執筆した論文と,多数で執筆した論文を同じように評価していることを批判する人もいます。これも研究分野によって評価の仕方はずいぶん違ってきます。

心理学者のジェンダー

現在アメリカ合衆国では,心理学の博士号の半数以上は女性が取得しているそうです。一方で,2014年の報告では,アメリカ合衆国内での心理学の教授に占める女性の割合は,まだ35%です。

「まだそれだけ」と思うかもしれませんが,カナダでは約20%,ヨーロッパやアジアではもっと少なくて,5%(オランダ)から21%(トルコ)の範囲です。そういえば,心理学の博士課程に所属している院生は圧倒的に男性が多い,とドイツの研究者に聞いたことがあります。国によって,ずいぶん雰囲気が違いそうです。

ジェンダーとh指数

心理学の領域において,ジェンダーとh指数がどのように関連するのかをまとめ,差を検討した研究があります。こちらの論文を見てみましょう(Gender and the h index in psychology)。

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