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愛着スタイルと長引きすぎる悲嘆
身近な人を亡くした後に悲しみや苦しみが続くことは,容易に想像できます。しかし悲嘆の程度にも個人差があり,非常につらく長い悲嘆を経験する人もいれば,そこまでひどい悲嘆を経験しない人もいるようです。
遷延性悲嘆障害
国際疾病分類第11版(ICD-11)には,新たに遷延性悲嘆障害(PGD)という診断が追加されているようです。PGDは,感情的な苦痛を示す1つ以上の症状と組み合わされた,なくなった人への広汎な憧れや認知的な偏執を特徴とするようです。
愛着
私たちにとって人間関係の基本的なパターンと言えるのが,愛着です。愛着理論では,人生の初期の段階で,養育者との間の関係から形成されるものとされています(遺伝率もあるので経験だけで形成されるわけではないのですが)。
近年の愛着研究では,愛着回避と愛着不安という2つの次元で愛着スタイルが表現されることが多いと言えます。愛着回避の高さは,親密さに不安を感じ,感情的な距離を保ち,自立をしていこうと過度に志向する傾向にもつながるようです。一方で愛着不安の高さは,親密な関係性に囚われ,拒絶されることを恐れ,見捨てられることを心配する傾向があります。
愛着回避も愛着不安も両方が高いと無秩序型となり,他者が予測不可能で,自分が他者から支持されるのかどうかわからないと感じます。そして両方とも低ければ,安定型となり,依存と自立の間の関係をバランスよく保ちます。
悲嘆と愛着
しっかりと安定した愛着をもつ人であれば,最愛の人を亡くしたとしても,それほど病的な悲嘆を経験しなくても良いのではないか,というのはなんとなくイメージできそうです。
一方で,特に不安型の愛着スタイルをもつ人は,愛する人への依存度が高いとされていますので,相手を失うことは絶えられない悲しみをもたらしそうです。また回避型の愛着スタイルの持ち主は,相手への依存度が低いことから,喪失がおきてもそれほどネガティブにはならないかもしれません。不安も回避も高い無秩序型だと,感情の混乱だけが大きく,一貫した悲嘆のパターンにならないかもしれません。
そこで,愛着スタイルと悲嘆との関係について,システマティックレビューとメタ分析を行うことで検討した研究を見ていきましょう。こちらの論文です(Adult attachment and prolonged grief: A systematic review and meta-analysis)。
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