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能力と教育が合致するかどうかが大切
先日,「学校の成績は能力の反映なのか」という記事をまとめました。
ポイントは,学校の成績には,その子が本来(生まれながらに)持っている能力がちゃんと反映しているのだろうかという点にあります。有名でのちに偉大な業績を達成した人々も,学校での成績が良くなかったことはいっぱいあるじゃないか,ということで多くの例が上げられている記事でした。
学校の成績は能力の反映か
その続きになる記事が,1915年に刊行された木村久一著『學校の成績は能力の指數にあらず』です。同じく心理学研究の前身の雑誌,心理研究に掲載されたものです。「前号の諸例を見ても……」というところから記事が始まりますので,まさに「続き」となっている記事だということがわかります。
学校の成績が悪くなる原因
学校の成績が悪くなる原因にはどんなものがあるか,ということが記事では書かれています。
大きな要因としては「都合の悪い型」だと主張されます。今の言葉でいえば,相性の悪さ,でしょうか。
「私たちの感覚は心象を残す」という話からスタートします。そして,ある人は視覚が優位,ある人は聴覚が優位,またある人は運動感覚が優位といったように,個人によってどの感覚が優位であるかは個人差がある,という話へとつながります。そして,この個人差は,どのような学び方が有利であるかの個人差につながってくるというわけです。視覚型の人は文章を読んで理解するのが得意で,聴覚型の人は話を耳にして理解するのが得意で,運動感覚型の人は自分が動いた経験を通して理解するのが得意になります。
このように,それぞれの人にはそれぞれがもつ得意・不得意があるというわけです。聴覚型の人は文章を読むときでも音声に置き換えがちなので,視覚型の人に比べて読むのが遅くなりがちです。講演を聴いて理解するということになると,超学型の人は難なくこなすことができますが,視覚型の人にとっては十分な理解が得られません。聴覚型の子どもや運動感覚型の子どもは,黙読よりも音読をすることで理解が進むということもある,とも書かれています。
合性
さて記事の中では,個々の人々がもつ「型」のうえに「合性」を考える必要があるということが主張されます。今の言葉でいえば「相性」のようなものではないでしょうか。
「聴覚型の傍聴者は視覚型の講演者を浅薄だと笑い,視覚型の傍聴者は聴覚型の講演者を難解な嚇し文句を使って深淵を衒う頭のわるい独りよがりだとけなす」
それぞれの型に合致するときにはその内容を十分に理解できて「面白い」と思うのに,自分の肩とは違う人の話を聞くと「つまらない」と思ってしまうということです。ということは,学校の成績が悪くなってしまうのは,その子の能力の問題というよりは「相性」のようなものではないか,ということになります。
もちろん,視覚優位型とか聴覚優位型とか,そのようなタイプが明確にあるわけではないとは思うのですけどね。個人の特徴を考えることの重要性については,その通りだと思います。
適性処遇交互作用
さてこの記事を読んで思い浮かべるのは,適性処遇交互作用(ATI; Aptitude Treatment Interaction)です。
適性処遇交互作用というのは,生徒の特性(適性)と教え方(処遇)の組み合わせによって,成績などの結果が変わってくるという考え方です。
多くの心理学の教科書に登場するATIですが,J.L.クロンバック(Cronbach, Lee J)が提唱したのは1960年代です。例えばこの論文は1969年ですね。
というわけで今回は,クロンバックより50年以上も昔に,日本の研究者が適性処遇交互作用のような考え方を発表していたというお話しでした。
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