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人間全体を2次元で捉えるモデル
アボットの『フラットランド』という本をご存じですか?もとは1884年にイギリスで出版された本で,これまでに何種類かの日本語訳が出版されています。
私が最初に読んだのは,講談社のブルーバックスだったのではないかと記憶しているのですが……。ああ,これです。『二次元の世界―平面の国の不思議な物語』というタイトルでした。古書は価格が高騰していますね。
この本は,二次元の平面世界に生活している人が世界をどのように見るのか,そしてそこに三次元から物体がやってきたらどのように見えるのか,というイメージを与えてくれます。視点の転換や発想の転換をもたらしてくれる,とても良い本です。不朽の名作のひとつですね。
平面に描く
私たちが平面に縦軸と横軸を描いて物事を整理することができるのも,三次元の世界に生きているからこそできることです。先ほどの本の中に描かれている二次元の世界に生きるフラットランドの住人は,「線しか見えない」のですから。
そして,心理学でも「縦軸」「横軸」を設定して,4つの象限を作り,そこに変数をあてはめたり人をあてはめることで整理する試みが,歴史のなかで数多く行われてきました。また,この縦軸と横軸に相当する「次元」が何かという探究もさまざまに行われてきており,現在でも検討が続けられています。
ビッグ・ツー
これまで,人間の基本的な特性次元として「ビッグ・ツー」とでも呼ぶことができるような,ふたつの次元でうまく整理する,という枠組みが提案されてきました。これらは歴史のなかで,いろいろな名前がつけられています。
◎タフネス と やさしさ
◎主体性 と 共同性
◎有能さ と 温かさ
◎男性性 と 女性性
◎道具性 と 表現性
◎有能さ と 道徳性
◎可塑性 と 安定性
などなどです。
共通次元
これらのように,さまざまに名前がつけられた次元が存在するのですが,実はこれらの基本的な次元には共通性があります。
先ほどの羅列の前者(タフネスや主体性や可塑性など)は,次のような特徴をもつ次元です。
◎自己利益,目標追求,達成追求,支配性など
そして後者(共同性や温かさや安定性など)は,次のような特徴をもっています。
◎他者焦点,社会的志向性,受容,つながり,コミュニティ中心性
これらの基本的な次元は,他のさまざまな心理特性の基礎にあると考えられています。社会的認知でも,自己認識でも,ステレオタイプでも,価値観でも,動機づけでも,そしてパーソナリティ特性でも,これらの2次元が根底にあるのです。
中核的次元
私たちが他者を見て一瞬で何かを判断します。これはステレオタイプ的な判断でもあるのですが,ここでも「有能性」と「あたたかさ」という2つの軸で判断しがちだということが,研究で明らかになっています。
この判断の仕方は,偏見や差別にもつながるのです。「あの人はやさしいけれど,あまり賢くない」とか。また一般的にあたたかさ次元は「女性性」に関連しやすいので,社会的地位が高い女性を目にすると「あの人は仕事はできるけれど,冷たそう」という偏見を抱きがちなのです。
「男性性」「女性性」という枠組みの歴史も古くて,日本でも研究が行われてきています。何となく「それっぽさ」というものがあって,上で整理したように,さまざまなところでこれに似たビッグ・ツーが見出されてしまうのです。
しかしこの枠組みは,単に男性性・女性性という枠組みではなく,私たち人間が物事を見るときの根底にあるものなのかもしれません。
作動性と共同性
この枠組みで,特に海外の論文の中によく登場するのは作動性(agency)と共同性(communion)です。先ほど示した前者のほうが作動性,後者の方が共同性と呼ばれてまとめられています。
この枠組みを基本として発展させた,『日本語版改訂非緩和共同性尺度』という尺度もあります。こちらの論文をどうぞ。
基本的な2次元については,心理学の文献を読むときに覚えておくといいかもしれません。なお今回は,以下のオンライン百科事典を参考にしています。
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