【読書感想文】「海と毒薬」 part1
こんばんは、アット新潟でライターをやっているこじけんです!今回私が取り上げるのは『海と毒薬』です。この本を読んで感じたことを大学生の自分が述べてみたいと思います。この作品と言えば人気Youtuber、東海オンエアの動画「読書感想文の感想文の感想文はどんな感想文なのか?」で取り上げられた作品です。この動画を視聴したのは3年前くらいですが、それからずっとこの作品を読んでみたいなと思ってました。
このnoteは「100日連続投稿企画」と称し、アット新潟のメンバーで運営しています!新潟に限らず様々なテーマで、学生や社会人が書き繋いでいく壮大な企画です💡
概略
感想文に入る前にこの作品の概略を述べたいと思う。まずこの作品は戦時下に行われた捕虜の被人道的な医学実験を元にフィクションにして書かれたものである。主人公勝呂とその周りの人間の思いを中心に書かれている。主人公はその実験に対して拒否感を感じるが、同じ医学実験に参加した人間たちは人生に行き詰まりを感じており、医学実験に参加することで自分を見つめ直そうとしている。主人公はこの医学実験の誘いに対し流されて承諾してしまうが、いざ実験が始まると勝呂は後悔の念に駆られる。一方周りにいた、同じ医局の研究員である戸田や上田看護婦は全く異なった感情・考えを持っていた。
「流される」
経緯
この作品を読み終えた後、真っ先に議論したいと思ったことは実験に対しての感じ方の対比関係であった。それは最もこの作品でフォーカスされていた部分だと感じたからだ。しかし、読み終えた直後は双方の意見について議論したくなったが、読み終えて1か月おいて再考したところ、それよりも私は、勝呂が非人道的な医学実験に同調圧力から参加してしまったように、勝呂の気持ち「流される」は私の身近に存在していると思った。なので勝呂の気持ち「流される」とはどのようなことか考えることにしよう。
本題
きっと「流される」という言葉はマイナスなイメージを持つはずだ。例えば、親が子の将来を心配して「周りに流されてはいけない」と言ったり、自分の半生を振り返って「流されてきてしまった人生だったなと」考えたりする。最近の私も同じように考えることがしばしばある。特に目の前で努力している人間がいると比較してしまいがちになる。だが同時に開き直って考えると、「流される」という行為は少し羨ましくも感じる。例えば、私は1年大学を休学したため現在3^_^年生であり、同期である4年の友がいる。彼らの何人かは就職活動を終えて、今は残された自由な時間を遊ぶことに費やしている(もちろん人それぞれであるが)。彼らの考えを予想するに、来年の春卒業して、就職するのでそれまで存分に遊び思い出を残そうとしているはずだ。これは他の就活を終えた大学4年生には十分魅力的に感じさせるものだから、残された時間を周りの影響を受けて「流されて」遊び倒すだろう。言い方を変えると同じ境遇を享受するということだ。
そのため、私の中での「流される」ことは決して悪いことのように思えない。確かにこの作品での主人公は非人道的である実験と知りながら周りの人間たちからの誘いを断ることができなかった。だがこの主人公の「流されている」と大学生周りによって影響されて「流されている」ことは果たして全く異なることと言えるのだろうか。そう思うようになった。
だが、実験中に勝呂は後悔と自責に駆られて逃げようとしていた。勝呂は必死に「流されないよう」に抗っていたのだ。彼の行為・願いは実験の最後まで成し遂げることはできなかったが、必死に現状から逃げようとしたり、自分を責めたりすることは周囲からの「同調圧力」に対しての疑問と抵抗のように感じた。戦時下では、軍部や医局などの絶対権力に対してNOは選択肢としてあるのだろうか。だから私は主人公の「流されまい」とする行為がこの作品にとって革命のように捉えられるようであったし、それは社会にとっての可能性であるようにも思えた。その本の現状を考えると「流される」ということは多くの者にとっては生き延びるためには善で一般的であり、表立って意を唱えることはできなかった筈だ。まとめると、明らかな反旗ではないが当時の医学実験に対し、拒絶を示した彼の行為は、今の私たちからは「希望」と感じることができるのではないだろうか。
もし、「流されている」と感じても、多くの人間はそのようにして生きている。仮に現状「流されている」ことに関して意を唱えるのであれば全てをひっくり返す要素が無い限り誰しも「流されて」しまうように感じる。もし主人公が実験中逃げ出したとしても、同じ医局の人間に反感を買ってしまうだろうし、実験を観察していた軍人に処罰されていたに違いない。これは自分達も同じで、現在生きている社会に対して革命や意を唱えることは反逆として見なされる筈だ。この作品を読んで、私は「流される」ことは善でも悪でもない「全く別の何か」と思うようになった。
海と毒薬の読書感想文part2も投稿予定なので是非ご一読下さい!
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