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Ryong あなたの明日を彩る執筆家
2021年4月12日 16:39
プロローグ雪がしんしんと降っていた。街の中央を流れる大きな川が上流の冷たい空気を運んで来る。実際の気温よりもよく冷えた。道行く人は巻きつけたファーのマフラーを鼻まで引き上げる。そして外套のチャックを閉める。誰しも足早に帰路に向かった。「マッチは、マッチは要りませんか」少女の声が聞こえる。雑踏の音で掻き消されてしまう、か細い声だ。声の主は背丈の小さな女の子だった。赤い頭巾を