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ハリー・ポッターと愚者の弁当箱〜Argus C3
田中長徳さんが「アーガスC3」についての投稿をされていて、それで昔使ったことがあるのを思い出したのである。
アーガスC3はアメリカ製である。
35mmフィルムを使うカメラでアメリカ製というのは珍しいのではないか。
もちろん初期のコダックをはじめアメリカで製造されたカメラはあって1900年代初頭にはアメリカがカメラ業界を牽引した時代があったが、フィルムカメラのほとんどが中古になっている現在で、ある程度価格がつき評価されるものの中でアメリカ製というはあまり見かけない気がする。
アーガスC3は1938年にラジオメーカーが発売したカメラだそうだ。
かなり売れたカメラらしく今でも中古を見かけることがある。
二重像を縦に合致させるレンジファインダーでレンズ交換式。
シャッターはBの他に1/10から1/300。露出計はない。
標準ではcintar50mm f/3.5というのが付いていて、交換できるとのことだが肝心の交換用のレンズを見たことがない。
何年か前にこのカメラがちょっと界隈で話題になったことがあって、それは映画「ハリー・ポッター」と何とかかんとかの劇中に登場したことからである。
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操作がまことに面倒であって、フィルムの巻き上げとシャッターチャージが別になっている。二重露光がしやすいという話もあるが、そんなもんこちとら年に一度も使わないのである。
フィルムの巻き上げをロックするボタンが付いていて、こいつをずらすと巻き上げは一コマでちゃんと止まるが、巻き上げなくてもシャッターをチャージして切ることができる。このために二重露光ができてしまうのである。
この巻き上げもノブをぐりぐり回すタイプのもので、ぼくのような箸より重いものを持ったことがない「おぼっちゃま」では指の皮がむけてしまう。
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またレンジファインダーであるからピントを手動で合わせるのだが、ボディの右上に付いているダイアルを回して合わせるというタイプのものだ。
他のカメラ、例えば前に紹介したフジカ35EEや昔のコンタックスなんかにもこういったタイプはあるが、このアーガスのものはクソ重いのである。
これも確実に指をやられる。
ま、ぼくの個体だけの話かも知れない。
じゃレンズの鏡胴をぐりぐり動かして合わせられないか、といえば、そんなことはなく、普通に他のカメラ同様に合わせることができるのだ。
全くアメリカ人は合理的なんだかなんだかよく分からないのである。
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このカメラの特徴は、なんといってもスタイルにあるだろう。
見事に「長方形」である。
そのためアメリカでは「レンガ(ブリック)」、日本では「弁当箱」などと呼ばれたようだ。
実際に持ってみないと感じが伝わりにくいのだけど、とにかく持ちにくい。
指をかけるところがないのである。
支点、力点、作用点はてこの原理で小学生くらいで学ぶが、人差し指は「作用点」としてシャッターボタンから外せないとすると、カメラ向かって左側の前面にあるシャッターチャージレバーに薬指なりを掛けて、これを「力点」とした時「支点」を小指としてボディのどこに置くか。もしくは中指でボディを親指とで摘むようにするか。
いずれにせよむちゃくちゃに不安定なのである。
ライカもぱっと見は長方形に見えるが、あればボディの左右が絶妙にラウンドしていたり、またシャッターチャージのレバーが、これまた絶妙に「支点」となるので、とても安定しているのである。
標準レンズのcintar50mm f/3.5はオールドレンズらしい収差と色のりである。
ここに載せた写真のカラーのものは「コダック エクター100」で、ちょっと特徴的な発色をしているが、ピントが来ているところは十分にシャープで、ボケも自然であるから好ましい。
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写真の情報を見ると使っていたのは2010年頃のようだ。
桜の写真が多いから、多分時期としても今くらいだったのだろう。
結構長くあったと思うが、いつの間にか手放したようだ。