ヒューマンライフケアの新規事業“住宅型ホスピス“開設に込めた想い。
2023年4月、デイサービスやグループホームなどの介護事業を展開しているヒューマンライフケア株式会社が、神奈川県川崎市に住宅型ホスピス「ヒューマンライフケア宮前ホスピスホーム」を開設します。この新規事業に携わったお二人に、施設の概要やサービスに込めた想いを伺いました。
——まずは、ヒューマンライフケアの事業について教えてください。
大槻:ご存じのように日本では多くのご家庭が、ご自宅で高齢者の介護をされています。私達はそうしたご家庭のニーズに応えるべく、デイサービス、訪問介護、訪問看護などの幅広い介護サービスを提供してきました。
一方で、認知症が進んでデイサービスに通えない、重度の肢体不自由で自宅介護が難しい、といったケースも増え続けています。その受け皿として、グループホーム(認知症対応型共同生活介護)や介護付有料老人ホーム(特定施設入居者生活介護)などの施設サービス事業も展開しています。
——新規開設する「住宅型ホスピス」とは、どのような施設ですか?
大槻:ホスピスとは、末期がんや難病などで完治の見込みがない患者さまに対して、痛みや症状の緩和を行い、人生の最期を穏やかに過ごしていただくための施設です。病院や高齢者施設に併設されているホスピスもありますが、私たちがオープンするのは独立した住宅型のホスピスです。医療施設とは異なり「ご自宅で暮らしているような環境」で、介護・看護・医療スタッフがチームを組み、24時間365日切れ目なくサービスを提供します。
——なぜ、このタイミングで住宅型ホスピスを開設することになったのですか?
大槻:今後ますます高齢化が進み、多死社会がやって来ることは避けられません。そのため人が亡くなる場所が不足していくと予想されています。と言うのも、入院治療を行っている末期がんや難病の患者さまには、積極的な延命治療を選択しない方々も多くいらっしゃるのです。そうした場合、病院は治療を行う施設ですから、患者さまは退院を迫られてしまいます。しかし、ご自宅で介護や看護を受けられる人ばかりではありません。
こうした状況の中で、私たちにできることがあるのではと考えました。私たちはこれまで全国に約180の介護事業所を運営し、軽度から重度までさまざまな方のサポートを行ってきました。その延長として、人生の最期を迎える方々のお手伝いができる施設をつくりたい。このような想いを実現するため、2020年に計画が立ち上がったのです。
——これからますます増える社会のニーズを見据えた事業ということですね。
大槻:ホスピスに入居をご希望される方は、ご家族も含めて、やはり自宅で最期を迎えたいというケースが多いんです。けれど、残念ながらいろいろな事情でそれができないご家庭が多い。そうした人たちにとって、選択肢の一つになればと願っています。
訪問介護から最期の看取りまで、介護サービスを重層化させることであらゆるニーズに対応し、地域社会に貢献していきたい。それが私たちの定義するCCRC※なのです。
——施設の特徴を教えてください。
飯干:「ヒューマンライフケア宮前ホスピスホーム」では、ご本人、ご家族の想いや希望を汲み取りながら、最期のときまでその人らしい生活ができるように専門のスタッフが支えます。川崎市には当社が運営するグループホームなどの事業所が17施設あり、また提携する医療機関「医療法人社団為世為人会」も川崎市を拠点としています。同法人が展開する川崎ヒューマンクリニック、ヒューマンデンタルクリニック、ヒューマン訪問看護ステーション、そして当社の介護事業所とも連携することで、より充実したサービスを提供できると考えています。
——介護だけでなく、医療や看護のサービスも受けられるんですね。
飯干:はい、そのため地域の連携医療機関はとても大事なパートナーです。医療機関の為世為人会と連携することで、神経内科専門医による神経難病の診療、理学療法士による運動療法、看護師による緩和ケア、歯科衛生士による口腔ケアなどのサービスを実現できました。
ただし入居できるのは、対象となる指定難病や末期がんの方に限らせていただきました。ご病気や状態を限定することで、そこに特化した医療・介護サービスを高品質に提供できると考えたからです。
部屋数は30室。24時間、専門のスタッフが常駐してご利用者さまを見守ります。またご家族については、365日の面会が可能です。コロナ禍でも安心して面会できる部屋や、ご家族専用の宿泊スペースも確保しています。
——どのような想いで開設準備を行われましたか?
大槻:私はずっとグループホームの事業に携わってきたので、ホスピスも生活の場であることを大切にしたいと考えていました。キッチンやリビングといった普通の生活に欠かせない場があることによって、少しでも穏やかな気持ちで過ごしていただきたい。そうした想いを施設の設計に込めています。
飯干:私は、おもに介護スタッフの採用業務を担当していました。採用の基準となったのは、スタッフそれぞれの「想い」です。看取りの場面が多いホスピスでは、最期のケアに対して強い想いを持ったスタッフでないと続けていくことは難しいと考えたからです。面接では、そうした「想い」を聞くことに時間を費やしました。その結果、「あえてホスピスで働きたい」という強い想いを持った方々を採用することができました。
——今後の展望をお聞かせください。
大槻:宮前ホスピスホームは、当社が運営する住宅型ホスピス第1号です。今後、他のエリアでも展開していけるよう、まずは安定した運営ができるようにスタッフ一同邁進していくつもりです。ご家族に「ここで最期を迎えてよかった」と思ってもらえるような、そしてスタッフにも「いいお見送りができたね」と感じてもらえるような、そんな施設にしていきたいと考えています。
私はホスピスを、亡くなるための場所と捉えてほしくないのです。残された短い時間を少しでも穏やかに、その人らしく生きてほしい。人生の最期に大事な人と有意義なお話ができたり、お互いに感謝の言葉を伝え合ったり、そういうことができる場となるよう、スタッフと共に目指していきたいですね。
<ヒューマンライフケア株式会社・会社概要>
ヒューマンライフケアは介護保険法施行前の1999年より介護事業を展開、現在では全国でデイサービスやグループホームなど各種介護事業所を179事業
所(2023年3月現在/FC含む)展開しています。
※2023年2月に取材した内容に基づき、記事を作成しています。
肩書き・役職等は取材時のものとなります。