【マーケティング x データサイエンス】データ分析を利益に変える方法
想定読者
近年、データ分析が身近な存在となり、多くのビジネスパーソンがデータ分析に触れる機会が増えています。しかし、分析結果をどのように活用して利益を生み出せるのか、またどのように分析を依頼すればいいのか、わからない方も多いかもしれません。本記事では、そんな方々に向けて具体的な方法を解説します。
企業におけるデータサイエンス
まず企業において、データサイエンスの位置づけについて考えてみましょう。
データサイエンスは、ビジネスや組織の活動をより効果的にするためにデータを収集・解析する手法です。重要なのは、”より効果的にする”という点です。つまり、データサイエンスは全く新しい事業の発見や革新的な知見の提供には限りがあります。しかし、既存の業務における課題解決(=既存業務をより良くする)に大いに役立てることができます。
例えば、以下のような活用法が考えられます。
手動で行っていたダイレクトメールの送付先を自動化し、さらに反応率を向上させたい。
顧客の嗜好に合わせたパーソナライズされた商品レコメンドを提供し、顧客単価を上げたい。
効率的な予算組みのため、各キャンペーンの効果検証をより信頼できる方法で行いたい。
これらの課題をデータサイエンスを活用して解決することで、業務の効率化や売上の向上を実現することができます。データサイエンスプロジェクトを立ち上げる際には、現場の課題感が重要な要素となります。
新しいアイデアや革新的な事業の構築とは異なり、データサイエンスは既存の業務や施策を効果的に改善するためのツールとして有効です。昨今話題の生成AIを使ったらどうか?とお考えの方もいると思いますが、社内でデータ分析活用の実績が乏しいなか取り組むにしては蓋然性が高いため、第一選択肢にはなりにくいと筆者は考えます。
まずは現場の課題を明確にし、データサイエンスを活用して解決することで、企業の成功につなげましょう。
データサイエンスの提供価値
前節では、現場の課題感から考えることの重要性について触れましたが、一方でデータサイエンスがビジネスに提供できる価値を整理しておくことも重要です。
データサイエンスが提供できる価値としては、大まかに以下の3つがあります。
予測
理解
検証
データサイエンスをビジネスに活かすためには、まずはこれらの価値を理解し、課題解決にどのように役立てるかを考えることが大切です。
予測
予測とは、文字通りで未来の何かを予測することです。例えば、来月の需要予測や、(実際にはまだ送っていない)ダイレクトメールの反応率予測などが挙げられます。
データサイエンスと聞くと、この予測をイメージする方が多いのではないでしょうか。しかし実はそれだけではないのです。
理解
理解とは、
顧客がなぜ商品を購入したのか
キャンペーンにより顧客の嗜好性はどのように変化したのか
のような現象メカニズムを理解・解明することです。筆者は、この顧客理解のためにデータサイエンスを活用することが多いため、ここで1点具体例を挙げます。
新規顧客獲得のため、値引きクーポンの配布や大型値引きキャンペーンを実施した結果多くの新規ユーザーが獲得できたとします。さて、このようにして獲得したユーザーと、以前から好意にしていただいているユーザーは、その行動原理において同じでしょうか。データサイエンスにより、それぞれのユーザーの行動パターンを分析することで、例えば
値引きキャンペーンで登録したユーザーは、「安さ」が行動原理であるため、セールのない時は買い控えしたり、競合サイトの方が1円でも安ければそちらで購入する傾向がある
ディスカウントのないタイミングで自然に登録してくれたユーザーは、「安さ」だけではなくその他の価値を感じてくれている。そのためむしろ単なる値下げだけでは刺さらず、よりロイヤリティを刺激するような特別感のある施策が有効かもしれない。むしろ値下げし過ぎることでサービスの「安っぽさ」を感じて離反するかもしれない。
のようなユーザー像が「理解」できます。データサイエンスは未来を予測するだけではなく、このように実際に起きた現象を理解することにも役立ちます。
検証
次節で詳しく説明しますが、予測・理解により利益を産むことができます。そこで、データサイエンスが実際に利益に繋がったのかどうか疑問に思うかもしれません。そこで、検証という概念が登場します。検証は、データサイエンスの効果を実際に検証するために行います。最近では、A/Bテストという手法をよく耳にするかもしれませんが、これは施策が売上にどの程度貢献したかを定量的に評価・検証するためのデータサイエンスの手法です。
データサイエンスは統計的手法を駆使して予測・理解・検証を行いますが、残念ながら全ての課題を完全に解決するための一つの手法は存在しません。したがって、データサイエンスを活用する際には、自分が予測・理解・検証のいずれをしたいのかを明確にする必要があります。
では、これらの機能をどのように利益につなげるのか次節で解説します。
データサイエンスを利益に変える方法
前節では、データサイエンスの提供価値として予測・理解・検証を挙げました。では、それぞれの機能をどのように活用すれば利益に結びつけることができるのでしょうか。以下に具体的な活用方法を説明します。
予測による利益の産み方
予測による利益の産み方には、大きく2種類あります。
1つ目の利益に結びつける方法は、予測値そのもので直接利益を産むことです。具体的な例としては、ECサイトにおけるレコメンド機能が挙げられます。レコメンド機能は、推薦することで購入するであろう商品を予測し、それをユーザーに知らせる機能です。これにより、売上の増加が期待できます。
一般的に、レコメンド機能の中身や仕組みはブラックボックスとなっており、具体的な動作原理は分からないことが多いです。しかし、予測が正しければ利益を継続的に生み出してくれるため、予測の正しさが重要です。予測が当たっていれば、ユーザーが興味を持ちやすくなり、購入する可能性も高まります。
ですので、レコメンド機能はブラックボックスであっても、予測が正確であればビジネスにおいて利益を生み出すことができるのです。もちろん、予測の精度を向上させるためには、適切なデータの収集やユーザー理解が重要なので、「予測が当たってさえいれば、その他はデタラメで良い」という訳には行きませんが、極論言えば当たってさえいれば良いのです。
2つ目の利益に結びつける方法は、予測結果をビジネス上の意思決定に役立てることです。1つ目の方法と異なり、予測結果を1度人間へフィードバックして、その結果を元に人間が効率的な意思決定を行います。
予測は、単純に未来の出来事を予測するだけではありません。データサイエンスが提供する予測は、ビジネスにおいてより効果的な意思決定を行うために活用されます。
例えば、来月の需要予測を行うことで、適切な生産計画や在庫管理を行うことができます。これにより、需要の変動に柔軟に対応し、コストを最適化することができます。
さらに、予測は財務やリスク管理にも応用されます。将来の売上や利益を予測することで、予算や投資計画の立案に役立ちます。
データサイエンスの予測は、未来の出来事を予測するだけでなく、ビジネスにおける意思決定や戦略の立案に活かされることが多いのです。正確な予測結果をもとに、リソースの最適化や競争力の向上を図ることができます。
理解による利益の産み方
理解による利益の産み方は、正確なユーザー行動原理に裏打ちされた新規施策の立案が挙げられます。今回はtoCビジネスをイメージしていますが、その他ドメインであっても同様に、現象の理解による新規施策の立案は可能と考えます。
ユーザー理解そのものはお金を産みませんが、だからと言ってどのようなユーザーがどんな理由で自社サービスを利用してくれているのかを知らなくても良い!という方はいないはずです。なぜならば、その情報がお金を産むことを意識せずとも知っているからです。
例えば、ユーザーがなぜ自社サービスを選んで利用いるのかを知ることで、自社サービスの特徴や魅力をより具体的に把握することができます。これによって、より魅力的なサービスやプロモーションを企画することができます。
また、新たなビジネスチャンスを見つけることも可能です。例えば、ユーザーが自社サービスを利用している中での不満や課題を把握することで、その解決策や新たな需要に気づくことができます。その結果、新たな商品やサービスを提供することができ、収益を拡大することができます。
データ分析の結果、「自社サービスを利用するZ世代ユーザーにはXXのような特徴があり、〇〇を訴求するプロモーションが刺さると考えられる」という提案が得られたらどうでしょうか。データサイエンスによりユーザー理解が利益に結びついているのがイメージできると思います。
検証による利益の産み方
検証による利益の産み方は、正確な効果検証に基づいたリソース最適化にあります。
先に説明した、予測・理解が実際に利益を産んでいる否かを定量的に検証することで、正しく売上増加に向けて努力ができているかを確認することができます。仮説が外れて、予測・理解による新規施策の効果がゼロであることは往々にして起こり得ます。そこで効果検証をすることで、意味のある施策・ない施策を振り分けることができます。
正確な効果検証ができれば、例えば来期の予算組みやメンバー配置の際に、施策間に優先順位をつけることができます。効果のない施策に多くのエンジニアや予算を割くことを避けることは、売上・コストの両面から非常に重要な意思決定ですし、利益に直結しているといえるでしょう。
各社が検証のためにA/Bテストを数多く実施していますが、その根底にあるのは、正しく狙った通りの効果が出ているかを逐一確認して有望な施策を見つけ出し、絶えずリソース最適化を図っていることになります。
まとめ
以上、データサイエンスによる利益の産み方について説明してきました。もちろん、予測と理解を組み合わせるなどの工夫は必要となりますが、自分が今データサイエンスのどの側面を以て利益に繋げようとしているのか意識することが重要です。
データ分析に関する相談や研修依頼など受け付けております。
質問・問い合わせはこちらから↓