植物と暮らす
僕は庭のない都内のマンションで育ちました。
僕は四階に家族と住んでいて、1人の老婦人が3階に住んでいました。
僕が住んでいたマンションは四階からセットバックした作りになっていて、老婦人の部屋のベランダは広く、テラスのようになっていました。
その老婦人は旅行が趣味でした。
そして、彼女は旅行に出る時、僕に鍵を渡して、テラスに所狭しと置かれた鉢植え達の世話を頼んでいました。
僕の大好きな仕事でした。
鍵を開け、暗く整頓された部屋を抜けて、テラスへ出て、水を撒き、枯れ葉を積む。
これは僕の初めての請負業務。
もう10年以上も彼女には会えていません。
彼女の年齢から考えて、もう会えないと思います。
僕は彼女に感謝しています。
そんな体験のせいか、僕は植物大好きな男に育ちました。
草や花の香りや、森林の匂い。
濃淡のある葉の色や、落ち葉が土に帰る時の匂い。
そうゆうモノが大好きな男になりました。
僕の近くは事務所もアトリエにも沢山の植物がいて、共に暮らしています。
そして、共に働いているとも言えます。
彼らは僕達の空間の快適さを高め、そして、数を増やし、お客様の元へ向かっていくからです。
そして、花を咲かせ、種をつける。
その花の一部はドライドされて、ボタニカルアートとなり、また、それを作る体験を子供達と共有したり、色々な価値を生み出してくれています。
そして、その価値があるからこそ、僕達はずっと共に暮らしていけます。
ずっと一緒に暮らしていく為に。
僕は彼らと生きていく方法をこれからも考え続けていきます。