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現場という戦場

僕は三つの顔を持っている。
一つは事業家としての顔。
一つは投資家としての顔。
もう一つは起業家としての顔だ。

今日は事業家としての話をしたい。

僕は事業家として、主に建設業に従事している。
それもゴリゴリの現場主義だ。
僕自身も職人であり金属製品の取り付け、加工、溶接などの金物工事が専門だ。

今回の話は実際、建設業に限った事ではない。
工事現場然り、レストランの厨房も音楽スタジオもアパレル店舗も水商売やイベント運営もコールセンターも僕から見れば戦場だ。

戦場ではない場所

酷く汚れた部屋でコンピュータの画面を覗く。
羅列される数字。

僕は幾つかのウェブサイトや本を開き、情報を確認して売買注文を入れる。
スマートフォンでは別のチャートを開き、珈琲を飲みながら、仲間内と情報交換をする。

これが僕にとって、戦場ではない戦いの場だ。
部屋がひどく汚れているのは戦場が近いし、僕自身も戦いに出る習慣があるからだ。

戦地の近くで指揮を取り、その部屋は前線基地の役割も帯びている。

僕は家庭に仕事を持ち込むタイプだ。
人生の為に仕事を行い、そして人生そのものに仕事を持ち込む。
一時期流行ったライフワークバランスという言葉が嫌いだった。
ライフの中にワークがある。
ライフorワーク的な視野に違和感があった。

今や家庭は前線基地であり、僕は家族で暮らしていたアパートから事業用不動産へ転居した。
ここにはアトリエがあり、事務所があり、ストックスペースがある。
そこで寝泊まりをする暮らしだ。

しかし、ここは戦場ではない。現場ではない。
それを自分自身で肝に銘じておく必要があると最近気が付き始めた。
仕事の現場は戦場だ。
家族で戦うとしても、その基地感満載の住環境に住まわされる家族に身になれば、それは少し異様であったと反省するに値した。

現場は戦場

話を元に戻そう。
僕は現場を戦場だと思っている。

将棋盤で言えば、自分自身が俯瞰的立場にいて指揮、指示する仕事と自分自身も将棋の駒になる場合の二種類があると思っている。

指揮や指示が重要であって、それと機能が付随して戦う海軍戦的仕事(僕の場合は資産運用やビジネス構築)と自らも駒として戦場に立ち、人間の力で事態に対して価値を提供していく仕事の二種類があると思っている。

そして、海軍戦では発想やリソースで切り抜けられる場合が多いが、現場仕事=陸軍戦はそうはいかない。

発送やリソースがあっても上手くいかない時は上手くいかない。この状況を解決する方法は僕の中では二つある。

一つは段取り。
一つは消耗戦だと知る事だ。

現場仕事=operationは不足の自体が必ず起こる。
多くの場合、これを機転や発想力で切り抜けられると信じている人をたまに見かけるが、正直弱い。
リアルな戦場ではない例えの世界だからいいが、リアルな戦場であったら戦死する。
現場仕事はロジスティクスとオペレーションフローの構成が重要であり、それを確立する行為が段取りだ。

そして、どれだけ段取りをして事に望んでも、必ず消耗するハメになる。
最終的にはロジスティクスは滞り、オペレーションフローは乱れるか形骸化していく。

そして痛んだ体、精神、リソースを引き連れて前線基地へ帰還する。リソースは消失しているモノも多いだろうし、疲労は能力も判断力も発想力も低下させる。

現場での戦いは常に段取りを持って挑み、消耗して終結する。
基本的にはこれの繰り返しなのだ。

敗北

海軍戦に例えた資産運用、陸軍戦に例えた陸軍戦。
そして、僕自身は海軍戦的要素に近いと思っているが、少し違うのと僕自身が仕掛ける事業性質上から空軍戦的だと考えている事業開発。

それぞれに敗北のパターンが存在する。

空軍戦は離陸失敗、撃墜、消息不明などで負ける。
これに関しては、この記事では詳しく触れない。

海軍戦は魚雷着弾の様に資産クラスの運用システムが炎上する。撃沈に至った事はないが、消化活動や救援措置が必要になる場合がある。
この場合は消化活動や救援措置に回った資産クラスでの収益も大幅に減少する事になる。
金銭的機会損失が起きる。

問題は陸軍戦の敗北だ。
これは痛ましい。

ヘトヘトの体。疲れ切った精神。ボロボロのリソース。
世の中の現場は自社単一で生成されるモノではなく、施主、一時請負(ゼネコン)工事店、メーカー
、設計者などの複数の人間によって構成されている。

そして、ここのオペレーションフロー形成、ロジスティクスの段取りに不備が生じた時は低い生産性に突撃するハメになる。
激戦の末、成果を収めても大半の場合はコストが掛かり過ぎる。結果、作戦としては失敗に終わる。

最悪の結果を避ける為に(建設業の場合は施工不良、納期遅延など)何とか最終防衛線を死守し戦い終わった後に莫大なコストの処理が残る事になる。

体や精神、リソースが回復するのに十分なペイを得られないまま、再度現場に繰り出し、チームの戦力は日々消耗していく。
その内、最悪の事態も避けられなくなるだろう。

基地設計

現場で戦う生き方をしている僕には、戦いの度に消耗する仲間や自分自身、その他のリソースを回復させる機構が必要だ。

さもなければ、消耗の末の敗北が待っている。

現場で戦う上で重要なのは
①成果にレバレッジが掛かる事
というのが一つあると思う。

実際の戦場でも、陸軍が制圧した島から爆撃機が飛び敵地を攻撃するなどの成果に対するレバレッジが効いて初めて陸軍戦のリスクと高コストな戦いは成果を成す。
これは第二次世界大戦の日米両軍が陸軍戦で勝利した後の成果を比較しても、この視点の有用性は明らかになるだろう。

僕は現場で稼いだ金銭を資産運用に回すシステムを作る事や、新規事業開発に回す事で海軍、空軍による戦果に対するレバレッジとして機能させている。
この仕組みは、それなりに機能してきた。

そして
②消耗に対する回復
も重要な要素だ。

人に対してはマルクス的な労働力の再生産コスト以上のインセンティブを支払っているが、基本的にそれだけに過ぎない。
経営に携わるメンバーは戦場感が抜けきらない本部へ戻り、損害の確認や次回作戦の段取りに入る。

下手すれば戦闘服たる作業服のままパソコンの前に雑然とした部屋で座り夜中まで作業する羽目になっている。
また痛んだリソースの回復にも手が回りきらず、作業ツールは消耗や破損を抱えたまま一週間以上稼働する事もある。

この状態はかなり芳しくないので、改善を試みている。

最後に
③心理的ストレスからの解放
である。

現場が戦場だという話をした最大の視点はここにある。
戦場で戦う。
その後に必要なのは、しっかりと、そのストレスから解放される事だ。

体や精神の疲れをキッチリと癒す環境が僕達には必要になる。
そうでなければ戦いを繰り返す度に消耗してしまう。
訓練と回復を繰り返す事で現場業務は強くなる。

その環境作りは非常に重要だ。

基地再編

世の中には沢山の人が現場で働いている。
現場で戦う人々は基本的には低賃金である場合が多い。

ブルーカラーの代表格であるごみ収集員、保育士、看護師、介護士。
現場職人、アパレル店員。
カメラマン、ミュージシャン。

彼らは皆戦場で戦っている。

それぞれがそれぞれのオペレーションをこなし、世界に必要な機能を人力で発揮している。

そして草臥れて、消耗して、時にはロジスティクスにも見放され孤軍奮闘する羽目にもなりながら、日々仕事に勤しんでいる。

僕は、自分の会社を、そんな人達にとって
①成果を最大化し
②消耗から回復でき
③安心できる場所
にしたい。

まずは自分自身の事業から
それを始めていきたい。

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