原稿には必ずルビを振って
誰でも読めるような漢字であっても、原稿には必ずルビを振っています。それは恥ずかしい失敗がたくさんあるからです。
今日は失敗談をお話ししましょう。
岡山で仕事をしていた時に取材で田中美術館に行きました。岡山県井原市で生まれた平櫛田中といえば近代日本を代表する彫刻家です。ところが生まれも育ちも大阪の私は名前すら知らなかったのです。そんな私が美術館の前でマイクを持って第一声「今日、私はたなか美術館にやってきました」と言ってしまいました。岡山では有名な彫刻家なのでこれを読めない人はおそらくいないでしょう。田中と書いてでんちゅうと読むのです。「お前はおおあんごうか!!」と大声で怒鳴られたのは言うまでもありません。ちなみにおおあんごうとは大馬鹿者という方言です。
ある番組でゲストを紹介したときのことです。こちらは「吉川(よしかわ)さんです」と名前をお呼びしました。中国地方には吉川と書いてきっかわと読むことが多いのです。人の名前はどんなことがあっても読み間違えてはいけません。生放送だったので編集もできず平謝りしました。
また、海辺のニュースを読んでいる時に
網(あみ)と綱(つな)を読み間違えました。
綱で魚は捕れません・・。
緊張状態では普段は何気なく読める文字も読めなくなることがしばしばあります。ミスを防ぐために私の原稿には今でもルビやアクセントの表記でいっぱいです。
昔、昔、まだ私がアナウンサーになるための学校に通っていた頃、校長先生から伺った話です。関西では大変人気のある角淳一アナウンサーがルビを振った原稿を坂東英二さんが覗き込んで「へぇ、こんな漢字も読まれへんの?」と言ったそうです。その時、大先輩の角さんは「ほっといてちょうだい!」と笑いながら仰ったそうです。
今でも書き込みでいっぱいの原稿です。
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